“反吐(へど)” の例文
「当てつけではない」と去定が云った、「きさまの腐った根性で、この部屋は反吐(へど)の出るほど臭い、その躯を自分でよく嗅(か)いでみろ」
伝統へのアンチテエゼが直ちに「水いらず」や「壁」や「反吐(へど)」になり得ないところが、いわば日本文学の伝統の弱さではなかろうか。
可能性の文学 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「また反吐(へど)か、反吐を吐く前に、ちょっとあの景色を見なさい。あれを見るとせっかくの反吐も残念ながら収まっちまう」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ああ云ふ奴は男の目から見ると反吐(へど)が出るやうだけれど、女にはどうだらうね、あんなのが女の気に入るのぢやないか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
それとも、無責任といわれようとも、かかずらってはいられないほど、反吐(へど)の出そうな存在で閑子はあるのだろうか。
妻の座 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「私小説の否定」というきょうの文学のやわたしらずの中で、三好十郎もまた吐くのは反吐(へど)という姿にある。
「そうね。巴里(パリ)を立ってから、もう幾日(いくんち)か知ら」「もうそろそろ二月(ふたつき)だね。海峡でお前反吐(へど)ついたでないか。西洋人の尼の奴もお前の側で反吐ついていたったね」
リギ山上の一夜 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
その凄(すさま)じい亀裂の上に、電線が反吐(へど)をはいたように入り乱れて地面を匍(は)っていて、足の踏みこみようもない。ただ電柱が酔払いのように、あっちでもこっちでも寝ている。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
宴席(えんせき)どなりの空部屋(あきべや)へ轉(ころ)げ込(こ)むと、ぐたりと寢(ね)たが、したゝか反吐(へど)をついて、お冷水(ひや)を五杯(ごはい)飮(の)んだとやらで、ウイーと受持(うけもち)の、一番(いちばん)さんへ床(とこ)を取(と)りに來(き)て、おや、旦那(だんな)は醉(よ)つて轉(ころ)げてるね
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
胸がむか/\いたしますから虎ノ門の傍(わき)で反吐(へど)を吐(つ)きました
梅若七兵衛 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あいつのつらを見るだけでも反吐(へど)が出そうになる、だからおめえに殴らせてやったんだ、と松田権蔵は云った。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
反吐(へど)もどしていればいるほど形勢は危(あや)うくなるだけであった。彼はほとんど行きつまった。しかし間髪(かんはつ)を容(い)れずという際(きわ)どい間際(まぎわ)に、旨(うま)い口実が天から降って来た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
反吐(へど)。
「屁十や三島なんぞにそんなことを云われると反吐(へど)が出そうになる、ひとを甘くみるとあとで後悔するよ」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「将門か。うん、気燄を吐くより、反吐(へど)でも吐く方が哲学者らしいね」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「そう泰然と尻を据(す)えちゃ困るな。まだ反吐(へど)を吐きそうかい」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「反吐(へど)が出そうだな」
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)