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千辛萬苦
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せんしんばんく
頼んで
遣したるならん五年の
間千辛萬苦して
貯たる金子もよく/\我に授らぬ金なり
斷念るより外無しと力を
抱持の
不十分さ
甲斐なき
身恨めしくなりて
捨てたしと
思ひしは
咋日今日ならず
我々二人斯くと
聞かば
流石運平が
邪慳の
角も
折れる
心になるは
定なり
我が
親とても
其の
通り
一徹の
心和らぎ
寄らば
兩家の
幸福この
上やある
我々二人世にありては
如何に
千辛萬苦するとも
運平に
後悔の
念も
出まじく
況してや
手を
分て
遣せし程のことゆゑ私し心底御
賢察下されたく萬一右等の儀を
遺恨に思ふ程ならば五ヶ年の間た
千辛萬苦して
貯へたる金子をいかに叔母成ばとて分ては
遣はしませぬ是
意旨を
今宵の中に御役御免を
願ば
今宵か明日は御親子
御對顏あるに
相違なし然すれば是迄
盡せし
千辛萬苦も水の
泡となり諸天善神へ
祈誓を
懸し甲斐もなく
嗚呼是非もなし
明朝六ツの時計を
相※に
悴忠右衞門を