別亭はなれ)” の例文
何が何でも、そこに立っちゃいられんから、ったか、ったか、弁別わきまえはない、凸凹でこぼこの土間をよろよろで別亭はなれの方へ引返すと……
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こゑきくよすがもらざりければ、別亭はなれ澁茶しぶちやすゝりながらそれとなき物語ものがたり、この四隣あたりはいづれも閑靜かんせいにて、手廣てびろ園生そのふ浦山うらやましきものなり、此隣このとなりは誰樣たれさま御別莊ごべつさう
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「考えものです——発起人方、幹事連と、一応打合せて、いまの別亭はなれの事は誰にも言わずに、人の出入りをしないようにした方がいかとも思います。」
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別亭はなれ洒落しやれたるがありて、名物めいぶつまつがありてと父君ちヽぎみ自慢じまんにすがり、わたく年來としごろまヽくらして、此上このうへのおねがひはまうしがたけれど、とてもの其處そこおくらしてはたまはらぬか、甚之助樣じんのすけさま成長おうきうならば
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いかにも、この別亭はなれ住居すまいらしい。どこを見ても空屋同然な中に、ここばかりは障子にも破れが見えず、門口に居た時も、戸を繰り開ける音も響かなかった。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
むかッとして胸をおさえて、沓脱くつぬぎつきもどすように、庭下駄を探った時は、さっき別亭はなれへ導かれた縁の口に、かれ一人、あざれた烏賊の燃ゆるのをに見つつ、頸筋、両脇に
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)