冷泉れいぜい)” の例文
これは初め錦江が冷泉れいぜい家について和歌を学んだので、その子孫は世〻儒学を修むるかたわら、国風をも伝えてその家学となしていた故である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
冷泉れいぜい院の女一にょいちみやと結婚ができたらうれしいであろうと匂宮におうみやがお思いになるのは、母君の女御も人格のりっぱな尊敬すべき才女であって
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
小袖に着けてある公卿紋くげもん雪頂笹ゆきのせざさが示すとおり御方の生家は、京都の堂上冷泉れいぜい中納言家の分家で、俗にしも冷泉と云われる太夫為俊たゆうためとし卿であった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いかに冷泉れいぜい折重をりかさねし薄樣うすやうは薄くとも、こめし哀れは此秋よりも深しと覺ゆるに、彼の君の氣色けしきは如何なりしぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
仲国はむろん団十郎で、小督局こごうのつぼねが秀調、小女房冷泉れいぜいが新蔵、「高野物狂」では高師四郎たかしのしろうが団十郎、ちご龍若が女寅めとらであったが、取分けて仲国が優れてよかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
始めから山門にお頼み下されば、こんな事にもなりませんでしたのに、冷泉れいぜい院ご誕生の時も、山門の慈慧じえ大僧正に九条右丞相くじょうのうじょうしょうがお頼みなされた先例もございます
その青年時代には尾張熱田の社司粟田知周あわたともちかについて歌道を修め、京都に上って冷泉れいぜい殿の歌会に列したこともあり、その後しばらく伴蒿蹊ばんこうけいに師事したこともあるという閲歴を持つ人である。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この両日に炎上の仏刹ぶっさつ邸宅は、革堂、百万遍、雲文寺をはじめ、浄菩提寺、仏心寺、窪の寺、水落の寺、安居院の花の坊、あるいは洞院とういん殿、冷泉れいぜい中納言、猪熊いのくま殿など、おびただしいことでございましたが
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
それぞれ二条・京極・冷泉れいぜいという。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
この夜も薫をお誘いになったのであるが、冷泉れいぜい院のほうに必ず自分がまいらねばならぬ御用があったからと申して応じなかった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
ちょうど、その翌る日にも、冷泉れいぜい大納言から、慈円に病を押しても参内せよという督促の使者が来た。弟子の静厳から
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
此方こなたして近づく人の跫音あしおとに、横笛手早く文ををさめ、涙を拭ふひまもなく、忍びやかに、『横笛樣、まだ御寢ぎよしんならずや』と言ひつゝ部屋へやの障子しづかに開きて入り來りしは、冷泉れいぜいと呼ぶ老女なりけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
この両日に炎上の仏刹ぶっさつ邸宅は、革堂、百万遍、雲文寺をはじめ、浄菩提寺、仏心寺、窪の寺、水落の寺、安居院の花の坊、あるひは洞院とういん殿、冷泉れいぜい中納言、猪熊いのくま殿など、おびただしいことでございましたが
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
家の子郎党の糾合きゅうごうなどに手間取るものは、急いであとより追ッかけて来い。——さくの留守には、南部師行もろゆき冷泉れいぜい家行らを残す。——あとはすべてわしにつづけ。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷泉れいぜい院の中宮の次へ尚侍をお加えになったために、夕霧の右大臣などはかえって兄弟の情をこの夫人に持っていて、何かの場合には援助することも忘れなかった。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
右大将が大納言を兼ねて順序のままに左大将に移り、この人も幸福に見えた。六条院は御譲位になった冷泉れいぜい院に御後嗣こうしのないのを御心の中では遺憾に思召おぼしめされた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
「さあ?」と鷹司卿はまた、冷泉れいぜい大納言のほうを向いて
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冷泉れいぜい院のみかどは姫君を御懇望になっているが真実はやはり昔の尚侍を恋しく思われになるのであって、何かによって交渉の起こる機会がないかとお考えになった末
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
冷泉れいぜい院のきさきの宮も御同情のこもるお手紙を始終お寄せになった。故人を忍ぶことをお書きになった奥に
源氏物語:41 御法 (新字新仮名) / 紫式部(著)
あの蔵人くろうど少将は奏楽者の中にはいっていた。初春の十四日の明るい月夜に、踏歌の人たちは御所と冷泉れいぜい院へまいった。叔母おばの女御も新女御も見物席を賜わって見物した。
源氏物語:46 竹河 (新字新仮名) / 紫式部(著)
冷泉れいぜい院の女御にょご様などの所へ、大納言様の続きでまいってもよろしかったのでございますが、それも恥ずかしくてできませんで、こうして山の中の朽ち木になっております。
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
二品にほんみやの若君は院が御寄託あそばされたために、冷泉れいぜい院の陛下がことにお愛しになった。
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
これに近い人というのは冷泉れいぜい院の内親王だけであろうと信じておいでになり、世間から受けておいでになる尊敬の度も、御容姿も、御聡明そうめいさも人のお噂する言葉から想像されて
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
六条院の人々は皆大厄難やくなんが来たように、悲しんでいる。冷泉れいぜい院も御心痛あそばされた。
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
冷泉れいぜい院が東宮でおありになった時代に、朱雀すざく院の御母后が廃太子のことを計画されて、この八の宮をそれにお代えしようとされ、その方の派の人たちに利用をおされになったことがあるため
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
薫がこんなふうに八の宮を尊敬するがために冷泉れいぜい院からもよく御消息があって、長い間そうしたお使いの来ることもなく寂しくばかり見えた山荘に、京の人の影を見ることのあるようになった。
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
杯が二回ほどめぐった時に、冷泉れいぜい院から御使みつかいが来た。
源氏物語:38 鈴虫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
どなたもどなたも私へ知らせてくださらなかったのですか。冷泉れいぜい院のほうにも御所のほうにもむやみに御用の多い幾日だったものですから、私のほうの使いも出しかねていた間に、ずいぶん御心配していたのです
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)