再度ふたたび)” の例文
「おや何かしらん」とあやしみつつ漸々ようようにそのわき近付つかづいて見ると、岩の上に若い女が俯向うつむいている、これはと思って横顔を差覘さしのぞくと、再度ふたたび喫驚びっくりした。
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
八百屋お七は家を焼いたらば、再度ふたたび思う人に逢われることと工夫をしたのであるが、吾々二人は妻戸一枚を忍んで開けるほどの智慧ちえも出なかった。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
物みなは歳日としひと共に亡び行く——郷土望景詩に歌つたすべての古蹟が、殆んど皆跡方もなく廢滅して、再度ふたたびまた若かつた日の記憶を、郷土に見ることができないので
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
只今是へ呼出すべしと有しに與力よりきかしこまり候と其儘そのまゝ立て行ければ此場に居合ゐあはせし者共は互ひに顏を見合みあはせしゝける富右衞門が再度ふたたび爰へ出べき樣もなし扨々さて/\御奉行樣は奇妙きめうなことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夫の膝を右の手で揺り動かしつ口説くどけど、先刻さきより無言の仏となりし十兵衛何ともなお言わず、再度ふたたび三度かきくどけど黙黙むっくりとしてなお言わざりしが、やがてれたるこうべもた
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
万一縄の具合で死に切れぬ時は再度ふたたび同様の刑罰を受くべきものだとしてありますが、妙な事にはピヤース・プローマンの中には仮令たとい兇漢でも二度める法はないと云う句があるのです。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
身はいにしへの斎藤主計かずへが娘に戻らば、泣くとも笑ふとも再度ふたたび原田太郎が母とは呼ばるる事成るべきにもあらず、良人おつとに未練は残さずとも我が子の愛の断ちがたくは離れていよいよ物をも思ふべく
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ああまた再度ふたたび抱き泣けど………
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
押拭おしぬぐさやをさめこしおぶれば父は再度ふたたび此方こなたに向ひ此家に長居する時は眞夜中まよなかなりとも如何なる人に知れて繩目なはめはぢを受んと言も計られねば早く立去り支度したくをしてと云にお光も心得て父諸共もろともに家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ん今年何月に死すべきや今年今月死し給ふべし今月幾日に死するや今年今月今日死し給ふべしと云にぞ靱負ゆきへは心中大いにいきどほりて再度ふたたび問ひけるは時刻じこくは何時なるや白水こたへて今夜三かうこくに死し給はん靱負は思はずことば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)