其許そこ)” の例文
物もよう喰べなんだのであろう。護良もりながとちごうて、其許そこは生れながら体もひよわい、気もよわい。こういう世に生きるには、もっと心を
「何を言わっしゃる、当事あてごともない、膝栗毛を見て泣くものがあろうかい。わしが事を言わっしゃる、其許そこがよっぽど捻平じゃ。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「——いつにない其許そこ弱音よわね、正成がまいっても勝目がないとは、なんとしたことばだ。しかも君前くんぜん、しかも今日の出陣を前に」
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうまでこれを教うるものは、四国のはてにもほかにはあるまい。あらかた人は分ったが、それとなく音信たよりも聞きたい。の、其許そこも黙って聞かっしゃい。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「では、あくまで其許そこは、朝廷と尊氏と和せというのか。そして、その御使みつかいには、自分が尊氏を説きに筑紫つくしへ行ってもよいとまで望むのか」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは、——其許そこは——自分じぶんくちから申兼まをしかねる次第しだいでありますけれども、わたし大恩人だいおんじん——いえ/\恩人おんじんで、そして、ゆめにもわすれられないうつくしいひと侘住居わびずまひなのであります。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
親房の一徹いってつにはからして少々まいる。第一政治の直裁は、人間でなければできぬ。——其許そこがしきりと憎む尊氏にも、よいところはあると思う。
「や、平家以来の謀叛むほん其許そこの発議は珍らしい、二方荒神鞍にほうこうじんくらなしで、真中まんなかへ乗りやしょう。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其許そこも知っていよう。かの海賊岩松経家の手の者が、経家の密書をこれへもたらしてみえたのじゃ。それによれば」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まこと、怨霊しずめなどが目的でなく、正しい仏法の光揚なら、この夢窓も其許そこ建立こんりゅうを手伝わぬわけにはゆかんが」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夜前やぜん、右衛門ノすけから何か聞かれたな。しかしお腹を立てられな。正成の諫奏、其許そこにたいして、容易ならざる儀を
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あのような御諚ごじょうではあっても、御心みこころのうちでは、其許そこの御真情を、おうれしくおぼしめされていたにちがいありませぬ
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや尼前あまぜ、六波羅にいた頃とは、大変りだ。其許そこたちの目から見たら、今の尊氏のすがたなど羅刹らせつのように見えようがな。……生きるか死ぬかだ。はははは」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「士は士を知るとか。おなじ護送されるにも、其許そこのような武士に送られるのは、身の倖せであったよ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、助かったら、他日、恩賞の日、其許そこを武将の叙位じょいの第一に推挙しよう。ああなにやら、濶然かつぜんと、闇がひらけて来たような。……道誉、忘れ難い一夜だな」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは頼朝公の後室、二位ノ禅尼ぜんに(政子)からわが家に伝わるものだが、出陣のはなむけに、其許そこへとらせる。この旗をかかげて、一日も早く兇徒を退治いたせ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さあれ、其許そこたち母子おやこは、朝敵のとがにつらなる者とはせぬ。——安住の地を与えてやろう、これにおれ——と仰せてはくださいましたが、なんぼうにも居耐いたがとうて
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「まったく、其許そこ一人の智謀がよく今日を招来したのじゃ。勲功随一と申してよい。早々に、伯耆ほうき船上山せんじょうせんのみかどの御本営へ、事のよしを使いにのぼせ、奏聞そうもんに達しおくぞよ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其許そこも御存知の土岐左近めが、公卿のたくみに乗って、六波羅の討手をうけ、あのような馬鹿な最期をとげたため、この方までが、とんだ飛ばッちりをうけるところでおざったよ。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「なんといっても、其許そこはやはり幕臣であろ。盟約のてまえ、打ち明けがたい」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、こちらも理不尽りふじん。気にかけられるな。……ところで、其許そこの名は」
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「みな、其許そこのお蔭」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其許そこ(頼尚)を初め
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「正行とは其許そこか」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)