つたは)” の例文
新字:
戸外おもての物音は車の響、人の聲から木の葉のそよぎまでが自由につたはつて來るし、家人は何時でも勝手に、何の會釋もなく襖を引開ける。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
芝居しばゐ土間どま煙草たばこつて、他人たにんたもとがしたものも、打首うちくびになるといふうはさつたはつたときは、皆々みな/\あをくなつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
と、このうはさはやくも軍艦ぐんかん」の全體ぜんたいつたはつたが、れもその本分ほんぶんわすれて「どれ、どんなをとこだ」などゝ、我等われらそばんでやう不規律ふきりつことすこしもく。
誰から誰につたはつたのか、事の次第は大袈裟に、社内の者の噂となつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
不動のうねり、おほらかに、ゆくらゆくらにつたはらむ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
久しく堂内の日陰に居た單衣ひとへの肌には、廊下をつたはつて流れて來る風が、いやに薄寒く感じられて來た。
歓楽 (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
それが、それからそれと三田の部屋迄つたはつて來た。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)