何刻なんどき)” の例文
もう何刻なんどきごろか。表の方では、花聟の列でも着いたのか、銅鑼どらや太鼓の音。そして“聟迎えの俚歌さとうた”などが賑やかに聞えだしている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆうべ何処へ行って、何刻なんどきに帰って来たかと詮議すると、旦那は五ツ(午後八時)頃に出て行って、四ツ少し過ぎに帰って来たらしい。
半七捕物帳:44 むらさき鯉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「おじじよ、お爺よ、何刻なんどきもこの世に居らぬものを、なにをのどかに暇どっていなさる……早う、お斎の仕度をせんけれゃ」
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
自分はすぐ、この奥まった座敷ざしきに独り残って、好きな謡曲ようきょく稽古けいこをはじめた。あれから何刻なんどきも経っていないはずである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何刻なんどき経ったか知れねえが、眼を覚してみると——親分の前だが、あれが本当の極楽というものかも知れませんよ」
「袴なんぞ構っちゃいられないんです、いま何刻なんどきぐらいですかね、ああいけない」彼は箸をほうりだして懐中を探り、あおくなって飯茶碗も置いて、飯茶碗は畳の上へ転げ落ちたが
思い違い物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いったい、何刻なんどきなんでしょう、たった今、鐘の音が一つ聞えたばっかりで、あとは聞えません、七ツの時が六ツ鳴りて……七ツにも、六ツにも、ここでは、さっぱりわかりません。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
それを知っていたら、今もう何刻なんどきだと思ってるんだ。やがて六ツになるじゃねえか。
「おめえが、お由利さんの部屋へ這入ったのア、何刻なんどきだった?」
東馬とうまもう何刻なんどきであろう?」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「左様——このやみでは、奇異な装剣も、切羽せっぱ象嵌ぞうがんも、よく見ることはできなかろう。おう、時に万殿、何刻なんどきであろう」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今日、山の上であの騒ぎのある少し前に、馬道の良助が、ここで着物を変えたそうだ。それは、何刻なんどきだったろう」
壁の根に背をあずけてコクリコクリやっていると——何刻なんどき経ったか、ふと、しきりに頭髪あたまにさわるものがあるので、右近は夢中で手をやって払い退けた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そのあいだに何刻なんどきほど経ったか。かれはもとより記憶していなかったが、唯さえ静かな家中がしんとして、夜ももう余ほど更けているらしいと思う頃に、次の間の畳を滑るような足音が微かに響いた。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「お待ち申すことは約束だが、際限なくこうしてはおられん。お名残の時刻を限っていただきたい。何刻なんどきまで——と」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、此處で宜い、格子を開けるまでも無いが——今晩平松屋の旦那が此家こゝから歸つたのは、何刻なんどきだつた」
銭形平次捕物控:282 密室 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
そういえば、何刻なんどき、あるいは幾日気絶していたものか。あたしにはてんで時の覚えというのがないのだから。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「そりゃあ何刻なんどきだ」
半七捕物帳:47 金の蝋燭 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「いや、ここでい、格子を開けるまでもないが——今晩平松屋の旦那が此家ここから帰ったのは、何刻なんどきだった」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
何刻なんどきほどたったか……フと寝返りをうった源三郎は、まぶたに、ほのかに光線ひかりを感じて、うす眼をあけました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「なあに、寝ちゃあいないよ。いい気持であの水調子みずちょうしを聞きれていたのさ。……今何刻なんどきだえ」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「脅かしの手紙は五日目まで来たと言いましたね。その晩お嬢さんが庭へ出ていたのは何刻なんどきごろでした」
「たれが、わざわざこんな所まで来て、嘘をいうか。いま、何刻なんどきだとおもう」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「夢なんです。」微笑して、「何刻なんどきでござんしょう。」
あの顔 (新字新仮名) / 林不忘(著)
父親が昨夜何刻なんどきに出て何刻に帰ったかも知らず、今朝佐久間町へ行ったことが知れて、ひどく父親に叱られた、という以外には何にもまとまったことはつかめません。
『……ああ、又酔ったか。こ、これはいかん、もう何刻なんどきか?』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何人斬ったか、何刻なんどきたったか。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
おどかしの手紙は五日目まで來たといひましたね。その晩お孃さんが庭へ出てゐたのは何刻なんどき頃でした」
「こよい、深夜の干潮は、正しくは何刻なんどきごろに相なるな?」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もはや何刻なんどきであろうの?」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「そいつには大した用事がなかったんだよ。ところでお神さん、毒は何刻なんどきほど経って効き始めたんだ」
『や? おれは。……しまった。もう、何刻なんどきだろう』
「八、大急ぎで明神様へ行って、境内に居る子供達に、昨日の夕方の事を聴いて来てくれ。どんな事をして遊んで、何刻なんどき頃迎いの者が来たか、その風体と人相が大事だ」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「もう何刻なんどきであろうかの」と弦之丞。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八、大急ぎで明神樣へ行つて、境内にゐる子供達に、昨日の夕方の事を聽いて來てくれ。どんな事をして遊んで、何刻なんどき頃迎ひの者が來たか、その風體と人相が大事だ」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「時に粂吉、もう何刻なんどきだろうな」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お前さんの、昨夜ゆうべ帰った時刻は、誰も知らないようだが、本当のところは、何刻なんどきだったろう」
「幽古。何刻なんどきだな? いまは」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お前さんの、昨夜歸つた時刻は、誰も知らない樣だが、本當のところは、何刻なんどきだつたらう」
「もう何刻なんどきでしょう、松虫様」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幾度か醒めては、広間の様子を覗き、幾度か気をうしなっては何刻なんどきとなく深い眠りにちました。
「いや。……いま何刻なんどきだな」
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢來やらいの酒井樣御下屋敷にまぎれ込んで、昨夜津志田樣の中間の半次が、宵のうちに來たか來なかつたかそれを訊いて貰ひたいよ。若し來たとしたら、何刻なんどきに來て何刻に歸つたか」
「……はや、何刻なんどきじゃ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他に業平の房吉と、權右衞門の妾の中の郷の師匠お朝の動きも調べ度い。——店を何刻なんどきに出て、向うへ何刻に行つて、何處を何う歩いて、何刻に戻つたか、詳しく訊いてもらひ度いが
「いま何刻なんどきか」とか
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「店を抜け出して来るのも容易じゃございません。今は何刻なんどきでございましょう」
「いまは何刻なんどきか?」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「店を拔け出して來るのも容易ぢや御座いません。今は何刻なんどきで御座いませう」
「いま、何刻なんどきか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)