仕誼しぎ)” の例文
相撲が近所で興行する、それ目録だわ、つかいものだ、見舞だと、つきあいの雑用ぞうようを取るだけでも、痛む腹のいいわけは出来ない仕誼しぎ
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筋の違つた腹立をついむら/\としたのみなれば、妾はどう我夫うちのするばかりを見て居る訳には行かず、殊更少し訳あつて妾がどうとか為てやらねば此胸の済まぬ仕誼しぎもあり
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
どこへ引越ひっこされる、と聞きましたら、(引越すんじゃない、夜遁よにげだい。)と怒鳴ります仕誼しぎで、一向その行先も分りませんが。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思うようにはならぬ骰子さいという習いだから仕方が無い、どうしてもこうしてもその女と別れなければならない、強いて情を張ればその娘のためにもなるまいという仕誼しぎ差懸さしかかった。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
万年町の縁の下へ引越ひっこすにも、尨犬むくいぬわたりをつけんことにゃあなりませぬ。それが早や出来ませぬ仕誼しぎ、一刻も猶予ならぬ立退たちのけでござりましょう。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
筋の違った腹立ちをついむらむらとしたのみなれば、わたしはどうも我夫のするばかりを見て居るわけには行かず、ことさら少しわけあって妾がどうとかしてやらねばこの胸の済まぬ仕誼しぎもあり
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いひおくれてはかへつてそびれてたのむにもたのまれぬ仕誼しぎにもなることゝ、つか/\とまへた。丁寧ていねいこしかゞめて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引被ひっかぶって達引たてひきでも、もしした日には、荒いことに身顫みぶるいをする姐さんに申訳のない仕誼しぎだと、向後きょうご謹みます、相替らず酔ったための怪我にして、ひたすら恐入るばかり。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いいおくれてはかえって出そびれて頼むにも頼まれぬ仕誼しぎにもなることと、つかつかと前へ出た。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ただ清書と詠草の綴じたのが入っているばかりの仕誼しぎ、わけを知ってるだけに、ひがみもあれば気がけるのに、目の前に異彩を放つ山河内の姫が馬車に積んで来た一件物
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
担いで帰ります節も、酒臭い息がかかろうかと、口に手拭てぬぐいみます仕誼しぎで。……美しいお女中様は、爺の目に、神も同然におがまれます。それにつけても、はい、昔の罪が思われます。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
多分たぶんは聞えまい、聞えなければ、そのまま通り過ぎるぶん。余計な世話だけれども、だまりきりもちっと気になったところひびきの応ずるが如きその、(はあ、わしけえ)には、いささか不意を打たれた仕誼しぎ
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)