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ちうがた
笠森稻荷のあたりを
通る。
路傍のとある
駄菓子屋の
奧より、
中形の
浴衣に
繻子の
帶だらしなく、
島田、
襟白粉、
襷がけなるが、
緋褌を
蹴返し、ばた/\と
駈けて
出で、
一寸、
煮豆屋さん/\。
落せしかば誠に
勿化の幸ひなりと悦びながら足を早めて
馳る程に
頓て鈴ヶ森へぞ
指懸りける斯る所に
並木の蔭より
中形縮緬の小袖の
裾高く
端折黒繻子の
帶を
脊にて
堅く
結び
緋縮緬の
襷を
懸貞宗の
短刀を
其處へ
病上りと
云ふ
風采、
中形の
浴衣の
清らかな
白地も、
夜の
草葉に
曇る……なよ/\とした
博多の
伊達卷の
姿で、つひぞない
事、
庭へ
出て
來た。
其の
時美人が
雪洞を
手に
取つて
居たのである。