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きのふけふ
月末にいたれば目にも
留るほどに
昨日今日と雪の丈け低くなり、もはや雪も
降まじと雪
囲もこゝかしこ取のけ、家のほとり
庭などの雪をも
掘すつるに
御恨み申は
罪のほども
恐ろしゝ
何ごとも
殘さず
忘れてお
主さまこそ二
代の
御恩なれ
杉原三
郎といふお
人元來のお
知人にもあらず
况てや
契りし
事も
何もなし
昨日今日逢しばかり
若かもお
主さまの
戀人に
未練のつながる
筈はなし
御縁首尾よく
整のへて
睦ましく
暮し
給ふを
と
何につけても
忍ばるゝは
又彼の
人の
事なりしが
思ひきや
孃さま
明日今日のお
物思ひ
命にかけてお
慕ひなさるゝ
主はと
問へば
杉原三
郎どのとや
三輪の
山本しるしは
無けれど
尋ぬる
人ぞと
知る
悲しさ
御存じ
無ければこそ
召使ひの
我れふし
拜みてのお
頼み
孃さま
不憫やと
思はぬならねど
彼の
人何として
取持たるべき
受合ては