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いつぱつ
何を
見たもありません、
本船左舷後方の
海上に
當つて
星火榴彈に
一次一發の
火箭、それが
難破船の
信號である
位を
知りませんか。
つゞいて
飛込まんとする
獅子を
目掛けて、
私は
一發ドガン、
水兵は
手鎗て
突飛ばす、
日出雄少年は
素早く
身を
跳らして、
入口の
扉をピシヤン。
お峯は
苦笑しつ。
明なる障子の
日脚はその
面の
小皺の読まれぬは無きまでに照しぬ。髪は薄けれど、
櫛の歯通りて、
一髪を乱さず
円髷に結ひて顔の色は赤き
方なれど、いと好く
磨きて
清に
滑なり。