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こゝろづ
はて、
何の
菜だ、と
思ひながら、
聲を
掛けようとして、
一つ
咳をすると、
此は
始めて
心着いたらしく、
菜を
洗ふ
其の
婦が
顏を
上げた。
彼には
悲愴の
感の
外に、
未だ一
種の
心細き
感じが、
殊に
日暮よりかけて、しんみりと
身に
泌みて
覺えた。
是は
麥酒と、
莨とが、
欲しいので
有つたと
彼も
終に
心着く。
「
今日は、」と、
聲を
掛けたが、フト
引戻さるゝやうにして
覗いて
見た、
心着くと、
自分が
挨拶したつもりの
婦人はこの
人ではない。
最早、
最後かと
思ふ
時に、
鎭守の
社が
目の
前にあることに
心着いたのであります。
同時に
峰の
尖つたやうな
眞白な
杉の
大木を
見ました。
先刻から、
出入りのお
秋の
素振に、
目を
着けた、
爐邊に
煮ものをして
居た
母親が、
戸外に
手間が
取れるのに、フト
心着いて
「よう。」と
反つて、
茫然として
立つた。が、ちよこ/\と
衣紋繕ひをして、
其の
車を
尾けはじめる。と
婦も
心着いたか
一寸々々此方を
振返る。
酔過して
寝ねたるなれば、今お村が僵れ込みて、
己が
傍に気を失ひ枕をならべて伏したりとも、
心着かざる
状になむ。
其時までは、
殆ど
自分で
何をするかに
心着いて
居ないやう、
無意識の
間にして
居たらしいが、フト
目を
留めて、
俯向いて、じつと
見て、
又梢を
仰いで
と
言つたばかりで(
考慮のない
恥しさは、
此れを
聞いた
時も
綱には
心着かなかつた、
勿論後の
事で)
其の
時は……と
言つたばかりで、
偶と
口をつぐんだ。
御迷惑か
存ぜぬが、
靄の
袖の
擦合うた
御縁とて、ぴつたり
胸に
當る
事がありましたにより、お
心着け
申上げます……お
聞入れ、お
取棄て、ともお
心次第。
はい、
此の
水は
源が
瀧でございます、
此山を
旅するお
方は
皆大風のやうな
音を
何処かで
聞きます。
貴僧は
此方へ
被入つしやる
道でお
心着きはなさいませんかい。
砂の
上に
唯一人やがて
星一つない
下に、
果のない
蒼海の
浪に、あはれ
果敢い、
弱い、
力のない、
身體單個弄ばれて、
刎返されて
居るのだ、と
心着いて
悚然とした。
はじめ、もう
其のあたりから、
山も
野も
眇として
諏訪の
湖の
水と
成る
由、
聞いては
居たが、ふと
心着かずに
過ぎた、——
氣にして、
女の
後ばかり
視めて
居たので。
いえ、
彼處に
供待ちをしました、あの
徒は
皆遊廓のでござりますで、
看板がどれも
新地組合、
印が
麗々と
書いてござります。
※さんたちが
心着けたでござりませう。
忽ち
心着くと、
同じ
處ばかりではない。
縁側から、
町の
幅一杯に、
青い
紗に、
眞紅、
赤、
薄樺の
絣を
透かしたやうに、
一面に
飛んで、
飛びつゝ、すら/\と
伸して
行く。
「あら苦し、
堪難や、あれよ/\」と叫びたりしが、次第にものも
得謂はずなりて、夜も明方に到りては、
唯泣く声の聞えしのみ、されば家内の
誰彼は藪の中とは
心着かで
衣絞明るく
心着きけむ、
銀に
青海波の
扇子を
半、
螢より
先づハツと
面を
蔽へるに、
風さら/\と
戰ぎつゝ、
光は
袖口よりはらりとこぼれて、
窓外の
森に
尚美しき
影をぞ
曳きたる。
七八人群飮むに、
各妻を
帶して
並び
坐して
睦じきこと
限なし。
更闌けて
皆分れ
散る
時、
令史が
妻も
馬に
乘る。
婢は
又其甕に
乘りけるが
心着いて
叫んで
曰く、
甕の
中に
人あり。と。
又奥方様をくはせる……
剰へ、
今心着いて、
耳を
澄ませて
聞けば、
我自からも、
此の
頃では
鉦太鼓こそ
鳴らさぬけれども、
土俗に
今も
遣る……
天狗に
攫はれたものを
探す
方法で
青年は
疾くから
心着いて、
仏舎利のやうに
手に
捧げて
居たのを、
密と
美女の
前へ
出した。
思はず
彫像を
焼いた
暖炉の
火に
心着いて、
何故か、
急に
女の
身が
危ぶまれて
来た。
成程、
覺束ない、ものの
形も、
唯一ツ
其の
燈の
影なのである……
心着くと、
便りない
色ながら、
其の
力には、
揃つて
消えた
街燈が、
時々ぎら/\と
光りさへする——
靄が
息を
吐いて
瞬く
中に
あたりは
眞暗な
處に、
蟲よりも
小な
身體で、この
大木の
恰も
其の
注連繩の
下あたりに
鋸を
突さして
居るのに
心着いて、
恍惚として
目を
睜つたが、
氣が
遠くなるやうだから、
鋸を
拔かうとすると
それと
遽に
心着けば、
天窓より爪先まで氷を浴ぶる心地して、歯の根も合はず
戦きつゝ、不気味に
堪へぬ顔を
擡げて、
手燭の影
幽に血の
足痕を
仰見る時しも、天井より糸を引きて
一疋の蜘蛛
垂下り
熱のある
身體はもんどりを
打つて、
元のまゝ
寢床の
上にドツと
跳るのが
身を
空に
擲つやうで、
心着くと
地震かと
思つたが、
冷い
汗は
瀧のやうに
流れて、やがて
枕について
綿のやうになつて
我に
返つた。