高志こし)” の例文
「これはおれが高志こし大蛇をろちを斬つた時、その尾の中にあつた剣だ。これをお前たちに預けるから、お前たちの故郷の女君をんなぎみに渡してくれい。」
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
この八千矛やちほこの神高志こしの國の沼河比賣ぬなかはひめよばはむとしてでます時に、その沼河比賣の家に到りて歌よみしたまひしく
高志こし八俣やまた大蛇おろちの話も火山からふき出す熔岩流ようがんりゅうの光景を連想させるものである。「年ごとに来てうなる」というのは、噴火の間歇性かんけつせいを暗示する。
神話と地球物理学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
八千矛の神のみことは、とほ/″\し、高志こしの国に、くわをありと聞かして、さかをありときこして……
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
久須という名義については、北陸方面の蝦夷を高志こし人と云い、樺太アイヌを苦夷くいと云い、千島アイヌを「クシ」というと同語で、蝦夷の事であろうという説がある。
国栖の名義 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
いまもなお悠然とこの日本の谷川に棲息せいそくし繁殖し、また静かにものを思いつつある様は、これぞまさしく神ながら、万古不易の豊葦原とよあしはら瑞穂国みずほのくに、かの高志こし八岐やまた遠呂智おろち
黄村先生言行録 (新字新仮名) / 太宰治(著)
次にオチワケの王は、小目おめの山の君・三川の衣の君の祖先です。次にイカタラシ彦の王は、春日の山の君・高志こしの池の君・春日部の君の祖先です。
すると意外にも、ここにいる、櫛名田姫くしなだひめと云う一人娘を、高志こし大蛇おろちいけにえにしなければ、部落全体が一月ひとつきの内に、死に絶えるであろうと云う託宣たくせんがあった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
八千矛の神のみことは、とほ/″\し高志こしの国にくはをありと聞かして、さかをありと聞こして……
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
古く既に素戔嗚尊スサノヲノミコトは、出雲の之川上から流れて来たのをて、山奥に人ありとの事を知られ、分け登って高志こし八岐大蛇やまたのおろちを退治して、奇稲田姫くしなだひめの危難を救われたとある。
賤民概説 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
かれ大毘古おほびこの命、高志こしの國に罷りでます時に、腰裳こしもせる少女をとめ、山代の幣羅坂へらさかに立ちて、歌よみして曰ひしく
高志こし大蛇をろちを退治した素戔嗚すさのをは、櫛名田姫くしなだひめめとると同時に、足名椎あしなつちが治めてゐた部落のをさとなる事になつた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれ建内の宿禰の命、その太子ひつぎのみこまつりて、御禊みそぎせむとして、淡海また若狹の國を經歴めぐりたまふ時に、高志こしみちのくち角鹿つぬがに、假宮を造りてませまつりき。
この時わが素戔嗚は、大日孁貴おほひるめむちと争つた時より、高天原の国をはれた時より、高志こし大蛇をろちを斬つた時より、ずつと天上の神々に近い、悠々たる威厳に充ち満ちてゐた。
老いたる素戔嗚尊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
次にヒコサシカタワケの命は、高志こし利波となみの臣・豐國の國さきの臣・五百原の君・角鹿のわたりの直の祖先です。天皇は御年百六歳、御陵は片岡の馬坂うまさかの上にあります。
「その高志こし大蛇おろちと云うのは、一体どんな怪物なのです。」「人のうわさを聞きますと、かしらと尾とが八つある、八つの谷にもわたるるくらい、大きなくちなわだとか申す事でございます。」
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)