高彫たかぼり)” の例文
これは風情じゃ……と居士も、巾着きんちゃくじめの煙草入の口を解いて、葡萄ぶどう栗鼠りす高彫たかぼりした銀煙管ぎせるで、悠暢ゆうちょうとしてうまそうにんでいました。
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この刀なんぞもその一つじゃ、よく見て置かっしゃれ、鞘はこの通り梨子地……つば象眼ぞうがん扇面散せんめんちらし、縁頭ふちがしらはこれ朧銀ろうぎんで松に鷹の高彫たかぼり目貫めぬきは浪に鯉で金無垢きんむくじゃ
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
返事を、引込ひっこめた舌のさきで丸めて、だんまりのまま、若い女房が、すぐ店へ出ると……文金の高島田、銀の平打ひらうち高彫たかぼり菊簪きくかんざし
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と言って主膳は、やや遠く離して置いてあった例の梨子地の鞘の長い刀の手繰たぐって身近く引寄せて、鞘のこじりをトンと畳へ突き立てて、朧銀ろうぎん高彫たかぼりした松に鷹の縁頭ふちがしらのあたりに眼を据えました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
指環をめた白い指をツト挙げて、びん後毛おくれげを掻いた次手ついでに、白金プラチナ高彫たかぼりの、翼に金剛石ダイヤちりばめ、目には血膸玉スルウドストンくちばしと爪に緑宝玉エメラルド象嵌ぞうがんした
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
びん後毛おくれげを掻いたついでに、白金プラチナ高彫たかぼりの、翼に金剛石ダイヤちりばめ、目には血膸玉スルウドストンくちばしと爪に緑宝玉エメラルド象嵌ぞうがんした、白く輝く鸚鵡おうむかんざし——何某なにがしの伯爵が心を籠めたおくりものとて、人は知って
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
判然はっきりした優しい含声ふくみごえで、きっとどめた女が、八ツ口に手を掛ける、と口を添えて、袖着そでつけの糸をきりきりと裂いた、籠めたる心にゆらめく黒髪、島田は、黄金の高彫たかぼりした、輝くおののごとくに見えた。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)