骰子さい)” の例文
私はいかにチベットでもそんな事はあるまいと思いましたが、それは非常なものでお寺の中で公然骰子さいを転がして博奕ばくちをやって居る。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「よろしい、人生は賭博とばくのごとしだ、……この骰子さいはわしの負けとしよう! 今度は諸君に、見事負けたのだ! ハハハハハ」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そして案の状、投げた骰子さいに目が出たので、次第に、胎龍は、一昨日おととい僕が話した夢判断通りの径路を辿って、一路衰滅の道へ堕ちて行ったのだ。
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
筒から投げられる骰子さいころの音が、森閑とした大理石の間に木魂こだまを響かせつつころころと聞えて来ると、宮子はコンパクトを取り出していった。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
幸いにも、その名誉、その威厳、その光明、その才能は、あの山師たる英雄や勝利者らが戦争と称する投機にかけることを得る骰子さいの目ではない。
むしろが持ち出された。四人は車座くるまざになった。一人は気軽く若い者の机の上から湯呑茶碗を持って来た。もう一人の男の腹がけの中からは骰子さいが二つ取出された。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
猶詳しく省察すれば輾轉して休まざる一の骰子さいの或は一を示し或は六を示して居るやうなもので、本是一個物である。最小時間に於ては二者相對して居ないのである。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
骰子さいの目に切った生鰤ぶり脂肉あぶらにく生姜しょうが醤油に漬けた奴を、山盛にした小丼を大切そうに片手に持って
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
骰子さいは投げられたのだと云つたやうな、思ひ詰めた心持で、その二階に消える足音を聞いてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
やくといふは、たとへば骰子さいかどがあり、ますにはすみがあり、ひとには關節つぎふしはうには四すみのあるごとく、かぜはうよりけば弱く、すみよりふけば強く、やまひうちより起ればしやすく
だが、骰子さいは彼のほうによっぽど大きな目が出なければ勝てぬようになっている。
おれはいちかばちかの骰子さいをなげた。案の定敵は、ドスを頭上にひからせつつまえのめりにおっかぶさってきた。おれは体をかがめたまま、まるたんぼうを両手ににぎって力まかせの「胴」をいれた。
放浪作家の冒険 (新字新仮名) / 西尾正(著)
二人は双六の骰子さいを手にした。
崔書生 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三個の骰子さいを用ゐて勝敗を決す
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
骰子さい転ばしをするもあれば花をもてあそぶもあり、随分立派な人でも喰物くいものけ位はやって居る。それが非常に愉快なものと見える。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
骰子さいは投げられたのだと云ったような、思い詰めた心持で、その二階に消える足音を聞いていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
朝命にたてをついて、安倍の頼時や、平泉の泰衡やすひらの二の舞を仕て見たところが、骰子さいの目が三度も四度も我が思う通りに出ぬものである以上は勝てようの無いことは分明だ。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
……骰子さいコロ投げやトラムプ占い式の残酷な方法で二人の中から一人を選み出すような事は、娘が信心する神様の御名にかけて出来ないし、それかといって昔物語にあるように
霊感! (新字新仮名) / 夢野久作(著)
或る日思いがけなく人間の歯の痕跡あとの付いた象牙の骰子さいの半分割れが出て参りました
思うようにはならぬ骰子さいという習いだから仕方が無い、どうしてもこうしてもその女と別れなければならない、強いて情を張ればその娘のためにもなるまいという仕誼しぎ差懸さしかかった。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
柴木しばきへし折ってはしにしながら象牙ぞうげ骰子さいに誇るこそおろかなれ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)