馴々なれ/\)” の例文
醉つ拂つて夜更けに歸つてくる爲吉を待ち構へ、馴々なれ/\しく傍へ寄つて、爲吉の部屋から持出した匕首で、後からやつたに違ひあるまい
新三郎とお露と並んで坐っているさまはまことの夫婦のようで、今は耻かしいのも何も打忘うちわすれてお互いに馴々なれ/\しく
やさしいなかにつよみのある、気軽きがるえても何処どこにか落着おちつきのある、馴々なれ/\しくてをかやすからぬひんい、如何いかなることにもいざとなればおどろくにらぬといふこたへのあるといつたやうなふう婦人をんな
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馴々なれ/\しいのとは違ふ。はじめからふる相識しりあひなのである。同時に女はにくゆたかでないほゝを動かしてにこりと笑つた。蒼白いうちに、なつかしい暖味あたゝかみが出来た。三四郎の足は自然しぜんと部屋のうちへ這入つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「なあに、小説?」と云ひつゝ彼女が馴々なれ/\しくそれをのぞき込んだ。
静物 (新字旧仮名) / 十一谷義三郎(著)
「あゝ、お徳さん」信造は馴々なれ/\しくいった。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
四國の丸龜までもどる者なりと答るに彼男私しは江州がうしうにて候が江戸表へあきなひに參り只今歸り道也是からまた尾州びしう名古屋へいたり夫より京大坂へ仕入しいれに登り候つもりに付幸ひ御供同樣に御召連下おめしつれくださるべし一人の道中と云者いふものは道にあきるものゆゑ御咄相手おはなしあひてに御同道仕つり度と然も馴々なれ/\しく申すにぞ後藤は否々いな/\某はまた道連みちづれの有は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何方どなたがお出でになってもお逢いにはなりません、種々いろ/\な名を附けてお出でになります、碌々ろく/\知らんものでも馴々なれ/\しく私は書家でございます、拙筆せっぴつを御覧に入れたいと
「嘘ではない、御主人は押入へ這ひ上がつて孫三郎を殺す力もなく、馴々なれ/\しくお玉さんの傍に寄つて、可哀想に耳にきりを叩き込むやうな恐ろしいことの出來る筈はない」
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
染吉が自首するに違ひないと見て取つて、勇太郎の姿が見えなくなると直ぐ染吉のところへ姿を現はし、馴々なれ/\しく話しかけ乍ら、勇太郎の忘れて行つたはかりで力任せに毆つたんだらう。
少し馴々なれ/\しい口をきいて、猪口を返す手に思はせぶりな力をこめたりしました。
第一お縫は、お町と仲が惡かつたさうで、背後うしろから肩へ手を掛けて、馴々なれ/\しく剃刀をのどへ廻されるまで默つて居る筈もなく、それに、下手人が女でないことは、八五郎が見て知つて居ります。
平次はさう馴々なれ/\しく呼んで、猪之松の傍に寄りました。