雨落あまおち)” の例文
お雪さんは、歌磨の絵の海女あまのような姿で、あわび——いや小石を、そッと拾っては、鬼門をよけた雨落あまおちの下へ、積み積みしていたんですね。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
セルギウスは女が檐下のきした雨落あまおちに足を踏み込んだと云ふ事を知つた。手に握つてゐる戸の鉤を撥ね上げようとする手先が震えた。
実は貸本の『絵本太閤記えほんたいこうき』から思い付いたことで、日吉丸ひよしまるが、蜂須賀小六はちすかころくのところから、刀を盗み出すのに、三晩も続けて笠を雨落あまおちに置き、小六の心を疲らせて
朝からの雨が雪になるかと思ったが、寒さがきびしいばかりで雪になるようすもなく、雨落あまおちの石を打つあまだれの音が、気のめいるような陰気な調子で、低く、ゆっくりと呟いているのが聞えた。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
雨落あまおち通草あけびの花はちりきてなか流れをり清きむらさき
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
町もこうは狭からざりしが、今はただ一跨ひとまたぎ二足三足ばかりにて、むかい雨落あまおちより、此方こなたの溝までわたるを得るなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨落あまおち通草あけびの花はちりきてなか流れをり清きむらさき
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
思いも寄らぬ蜜柑みかんの皮、梨のしんの、雨落あまおち鉢前はちまえに飛ぶのは数々しばしばである。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
雨落あまおち敷詰しきつめたこいしにはこけえて、蛞蝓なめくぢふ、けてじと/\する、うち細君さいくん元結もとゆひをこゝにてると、三七さんしち二十一日にじふいちにちにしてくわして足卷あしまきづける蟷螂かまきりはら寄生蟲きせいちうとなるといつて塾生じゆくせいのゝしつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふと、高縁たかえん雨落あまおちに、同じ花が二、三輪咲いているように見えた。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)