むず)” の例文
先生はこの頃になって酒をこうむること益々ますますはなはだしく倉蔵の言った通りその言語が益々荒ら荒らしくその機嫌きげん愈々いよいよむずかしくなって来た。
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
いや、わたしとて、太夫たゆうもとのようになってもらいたいのは山々やまやまだが、いままでの太夫たゆう様子ようすでは、どうもむずかしかろうとおもわれる。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
電車の便利のない時分、向島むこうじまへ遊びに行って、夕飯を喰いにわざわざ日本橋まで俥を飛ばして行くというむずかし屋であった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
通常粉雪といって簡単に通っている言葉を何だか無理にむずかしく解釈しているようであるが、この種の問題を現在の物理学に結びつけようとすると
粉雪 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「ホホホホ、おむずかりもほどになさいませ。いま一のいとをしめて、私調子を合わせたばかりのところでございますわ」
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
文学はむずかしい道、小説を書いて一家を成そうとするのは田中のようなものには出来ぬかも知れねど、同じく将来を進むなら、共に好む道に携わりたい。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
最前さいぜん用いたむずかしい言葉を使うと不体裁の感を抽出して、裸体画は見るべきものであると云う事に帰着します。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨夜ゆうべはどうにか持ち越しましたが、今夜あたりは、とてもむずかしそうだから、すぐに、私と一緒に来て貰いたいと——へい、長屋中の相談で、お知らせに飛んできたような訳で……
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鄙吝ひりんでもあったろうが、鄙吝よりは下女風情に甘くめられてはというむずかし屋の理窟屋の腹の虫が承知しないのだ。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「ほほほ。あらたまっていうから、どれほどむずかしい頼みかと思ったら、いっそ気抜けがしちまったよ。二時ふたときでも三時みときでも、あたしの体でりる用なら気のすむまで、ままにするがいいさ」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それでは文芸とは如何いかなるものぞと文芸の定義を下すと云うことは、又っとむずかしいことで、とてもおいそれとそんな手早く出来ることではない。かくう云う問題は答えるに些っと答えにくい。