雛妓おしやく)” の例文
雛妓おしやく達が若い張りのある聲で『いつちく、たつちく太右衞門どん——』を繰り返しました。鬼にされたのは白旗直八。
新橋の老妓らうぎ桃太郎がその往時むかし雛妓おしやくとして初めて座敷へ突き出された時、所謂ねえさんなる者から、仮にもをんなの忘るまじき三箇条の心得を説き聞かされた。
もう羽織も欲しい季節だといふのに浴衣の重ね着をして控えてゐた傍らの雛妓おしやくを見たので、慌ててその子に渡すと、その養母はゝと二人が非常に丁寧に頭をさげて
熱海線私語 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
帶廣おびひろは十勝の頭腦、河西かさい支廳の處在地、大きな野の中の町である。利別としべつから藝者雛妓おしやくが八人乘つた。今日網走あばしり線の鐵道が※別りくんべつまで開通した其開通式に赴くのである。
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
子は母が胸の上で指差してゐる踊子に見当をつけてよく見ると、最後から二番目のまだ小さい杓子顔の雛妓おしやくであつた。子はその顔から何処か良い所を捜さうとつとめてみた。
(新字旧仮名) / 横光利一(著)
白粉おしろいに汚れた赤い襟の平常着ふだんぎ雛妓おしやくのやうな姿をしたお光を連れて、愛宕神社あたごじんしやへ行つた時、内部なか空洞うつろになつてゐる大銀杏おほいてふに蜂が巣を作つてゐるのを見付けて、二人ふたり相談の上
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
が、太鼓腹たいこばら突出つきだして、でれりとして、團扇うちは雛妓おしやくあふがせてるやうなのではない。片膚脱かたはだぬぎで日置流へぎりうゆみく。獅子寺ししでら大弓場だいきうば先生せんせい懇意こんいだから、したがつて弟子でしたちに帳面ちやうめんいた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雛妓おしやくや、若い藝妓達——力にさからはないやうに慣らされて居る女達——は、斯う艶めかしい合唱を響かせました。
それは幼い雛妓おしやくんで遊ぶ事で、枯れかけた松の周囲ぐるりに、小松を植ゑると、枯松までが急に若返へるやうに、訥子はかうしてをんなの若さを自分のものにしてゐる。
彼が或る女と家を逃げ出したこと、雛妓おしやくに惚れて親爺から勘当されたこと、などを妻は知つてゐた。
明るく・暗く (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
お君ちやんと呼ばれた娘の方を兵野が眺めると、丈のすらりとした細おもての、髪を桃割れに結つた、一見、場末の雛妓おしやく風に装つた小娘が、おでんの鍋の傍らで燗番役をつとめてゐた。
露路の友 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
雛妓おしやく達も藝妓も皆な並べて
雛妓おしやくのやうな恰好をしたりして役者などの噂ばかりしてゐる彼女に私は反感を覚えて、凡そ客観的にさへ魅力などを覚えた験しもなかつたのだが、今の輝子の様子は如何にも颯爽とした女学生風で