閾際しきゐぎは)” の例文
自分じぶん蒲團ふとんそばまでさそされたやうに、雨戸あまど閾際しきゐぎはまで與吉よきちいてはたふしてたり、くすぐつてたりしてさわがした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かう言つて母親が閾際しきゐぎはに額を押しつけると、延宝も小便しゝに濡れた太守の着附のまゝで叮嚀に栗のやうな小さな頭を下げた。
ふつと横を見ると閾際しきゐぎはに誰やら手をついてお辞儀をして居るので、おつかさまは初めて新たに人が来たのを感付いた。それでもまさか儀平の女房であらうとは思ひ寄らなかつた。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
その時ふすまいて、小倉のはかま穿いた書生が閾際しきゐぎはに手を突いた。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「さあそんぢやまた、みんなあがれ」とばあさんがいふと閾際しきゐぎはせまつてつて子供等こどもらあらそうてせきをとつた。彼等かれら今日けふせまれう内側うちがはにぎつしりとひざすぼめてすわつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お伴の小さい政治家二人は苦り切つた顔をして閾際しきゐぎは衝立つゝたつてゐたさうだ。
彼が閾際しきゐぎは近く来たとき、村の女房達らしい者が二三人高声で話し合ひながら、往来を通つて行くのが彼の目にも見えた。これはさつき御堂に上つてから初めて彼の知覚にとまつた人の気勢である。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
教師はそれを持つて、何かまた事業しごと目論もくろんだらしかつたが、それも結果が悪かつたかして、また馬左也氏の応接間へひよつくり出て来た。そして閾際しきゐぎはに立つて鄭寧ていねい胡麻白頭ごまじろあたまを下げてお辞儀をした。
と言つたが、亭主は閾際しきゐぎはにかいつくばつて