違背いはい)” の例文
熊野牛王くまのごおうの誓紙には、日本国中の大小神祇じんぎ八幡大菩薩はちまんだいぼさつ愛宕山権現あたごやまごんげん、ところの氏神にも、違背いはいあれば御罰をこうむらんと明記してある。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大「勘弁まかりならん、神原殿がお頼みによって、其の方に申聞もうしきけた、だが今になって違背いはいされては此の儘に差置さしおけんから、只今手討に致す」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
娘艶儀、御前様へ生涯しょうがい抱切かかえきりお妾に差上げ申し候ところ実証なり。婿栄三郎方は右金子をもって私引き受け毛頭違背いはい無御座候。為後日証文依而如件よってくだんのごとし
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
七歳の時から感應院の手元てもとそだち殊には利發りはつ愛敬者あいきやうものなり誰か違背いはいすべきいづれも其儀然るべしと相談さうだんこゝに決したり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わざ/\おつかいにてかたじけのうござります、しゅりのすけどのは信長公の御老臣のことでもござれば、なんで違背いはいいたしましょうや、これからは万事おさしずをねがいますと
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
若しこの命令に違背いはいすれば、今度こそは命がないものと思え。恐怖王
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
違背いはいなく仕りますれば」と、ひたすら彼の寛仁を仰ぎ、その日から力を城内民の鎮撫にそそいで、治安の実績をあらわした。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
孝「至極御尤ごもっともなる仰せです、家内だけなれば違背いはいはございません」
もちろん、違背いはいはいたしません。けれど、東国の草莽そうもうよりった古源氏ふるげんじえい、尊氏の寸心にも、ひとつの信条がござりまする。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
志をひるがえして、織田の軍門に降伏するならば、戦後、備中、備後の両国に多分の領地をわん。神明に誓って違背いはいはない。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、この半兵衛が御命を違背いはいした罪も、同様、みずから寸功をたててつぐなうべし——と、かように御意下されば、これに越す君恩はございませぬ
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蜀の臣下もまた、先帝の遺詔を、暗誦するばかりくり返しくり返し読んで、かならず違背いはいなきことを孔明に約した。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多寡たかが裏切者の質子ちしひとりの処分とは申せ、かりそめにも、重き君命にたいし、今もって、何の処置もとっていないとすれば、違背いはいの罪、捨ておかれません。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「案じ給うな、武人と武人の約束は金鉄である。予も徳のうすい人間であるが、四海を感ぜしめんためには、誓って違背いはいなきことを改めて、もう一度いっておく」
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
礼儀と愛と信とが、血をもって違背いはいなく結ばれている点が、やがて君臣の道をも強くしていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「——かならず義貞とよう談合をとげよ」とお言葉のあった後醍醐の仰せつけにも、これで違背いはいはないとする満足も心にあった。何もかも、彼の心は涼しかった。愉しかった。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
立て——袁術、朝廷に対して、違勅のとがあり、早々、兵を向けて南陽を討つべしと、詔を以て、命じます。正直真っ法の玄徳、天子の命とあっては、違背いはいすることはできますまい
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いと易いこと」と、曹操はすぐ筆をとって、当手の軍勢ども、呉へ入るとも、龐統一家には、乱暴すべからず、違背いはいの者はざんに処す——としるし、大きな丞相印をして与えた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お供のならぬのは残念にござりますが、ご違背いはいはつかまつりませぬ」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
超えて、つい独断、立ち働きいたしました。万一仕損じたみぎりは、生きて帰らないつもりでしたが、思いどおり城が陥ちたので立ち帰りました。御命令に違背いはいの罪、どうぞお叱り置きねがいまする
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
違背いはいあるにおいては、味方たりといえども斬罪ざんざい
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
違背いはいしたわしの罪があるのみ
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
違背いはいする者は断罪に処す。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)