過日こないだ)” の例文
何から何まで見透しでお慈悲深い上人様のありがたさにつくづく我折って帰って来たが、十兵衛、過日こないだの云い過ごしは堪忍かにしてくれ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
過日こないだ奧の縁側で、祖母おばあさんと何か議論してるの。そして靜子々々つて何か私の事言つてる樣なんですからね、惡いと思つたけど私立つて聞いたことよ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
過日こないだのしけの時などは、下水を溢れて滝のように流るる汚水の中に、押し合いヘシ合って電車に乗る人々、自動車のタイヤの両側に破れむしろを袴のように垂らして
過日こないだッからお精進をしたんです。今朝は、髪を洗って、あけ方お湯を貰ったんです。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
にがちゃれて、森永もりながのドロップスなど出してくれた。余等は注文ちゅうもんしてもぎ立ての玉蜀黍をの火で焼いてもらう。あるじは岡山県人、四十余の細作ほそづくりな男、余作君に過日こないだくすりは強過ぎ云々と云って居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
過日こないだ長六爺ちょうろくじじいに聞いたら、おいらの山を何町歩なんちょうぶとか叔父さんがあずかって持っているはずだっていうんだもの、それじゃあおいらは食潰しの事は有りあしないじゃあないか。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
過日こないだもね、おめえ、まったくはお前、一軒かけ離れて、あすこへくのは荷なんだけれども、ちとポカと来たし、うおがなくッて困るッて言いなさる、廻ってお上げ、とお前さんが口を利くから
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
過日こないだの夜のおれが云うたあの云い過ぎも忘れてもらいたいとおもうからのこと、聞いてくれこういうわけだ、過日の夜は実は我もあまり汝をわからぬ奴と一途いちずに思って腹も立った
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
前様めえさま小児こどもとき姉様あねさまにしてなつかしがらしつたと木像もくざうからえんいて、過日こないだ奥様おくさま行方ゆきがたわからなくつたときからまはめぐつて、采粒さいつぶまとふ、いま此処こゝさいがある……山奥やまおく双六すごろくいはがある。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)