諸膝もろひざ)” の例文
女はあっと云って、めた手綱を一度にゆるめた。馬は諸膝もろひざを折る。乗った人と共に真向まともへ前へのめった。岩の下は深いふちであった。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
最近さいきんは……もつと震災前しんさいぜんだが……土橋どばしのガードした護謨輪ごむわさつふうちに、アツとおもふとわたしはポンとくるまそと眞直まつすぐつて、車夫わかいしゆ諸膝もろひざで、のめつてた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこを敵中の一将牛金ぎゅうきんが、首を掻こうと駈けてくるのを、呉の丁奉ていほう徐盛じょせいらが、馬の諸膝もろひざぎ払って牛金を防ぎ落し、周瑜の体をひっかついで呉の陣中へ逃げ帰った。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
突然いきなり年増としま行火あんかの中へ、諸膝もろひざ突込つっこんで、けろりとして、娑婆しゃばを見物、という澄ました顔付で、当っている。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ここです」と藤尾は、軽く諸膝もろひざななめに立てて、青畳の上に、八反はったん座布団ざぶとんをさらりとべらせる。富貴ふうきの色は蜷局とぐろを三重に巻いた鎖の中に、うずたか七子ななこふたを盛り上げている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雑所は諸膝もろひざを折って、倒れるように、そのかたわらで息をいた。が、そこではもう、火の粉は雪のように、袖へかかっても、払えば濡れもしないで消えるのであった。
朱日記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蹌踉よろよろと、壁へ手をつくばかりにして、壇を下り切ると、主税は真暗まっくらな穴へ落ちたおもいがして、がっくりとなって、諸膝もろひざこうとしたが、先生はともかく、そこまで送り出そうとした夫人を、平に
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)