詐欺師さぎし)” の例文
もしあの童子どうじけましたらば、それこそ詐欺師さぎし証拠しょうこでございますから、さっそくくらいげて、かえしていただきとうございます。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
疑いもなく、詐欺師さぎしの眼である。嘘をついている人の眼を見ると、例外なく、このように、涙で薄く潤んでいるものである。
善蔵を思う (新字新仮名) / 太宰治(著)
おむらも、そこまで聞くと、古い新聞記事で読んだ、女天一坊だの、華族の女詐欺師さぎしだのという、あくどいみだしを記憶の中に拾うことができた。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
書ばかり書いている変な人だったというが、現にその子孫という家もあって、とにかくに詐欺師さぎしではなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この間ある雑誌をよんだら、こう云う詐欺師さぎしの小説があった。僕がまあここで書画骨董店こっとうてんを開くとする。で店頭に大家のふくや、名人の道具類を並べておく。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この詐欺師さぎしめが、天下てんかぴんに、二つあって、たまるものか。おまえは、あの物識ものしりとぐるになって、おれに、やくざものわせようとたくらんだにちがいない。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まるで詐欺師さぎしだね、きみは。人をだます名人だ。もう勉強してやらないからいい」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
投機者には通有らしい、めまぐるしく動く大きな眼——それはもう一歩というところで詐欺師さぎしのそれと一致するものだが——の眼尻に、この人に意外な愛嬌を添える小皺ができはじめた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
交際まじわりをしないということがおきてとなっておりますので、何故というに下界人は、悪者で嘘吐きでペテン師で、不親切者で薄っぺらで、馬鹿で詐欺師さぎしで泥棒で、下等だからでございます……
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「われ、あまりに愚かしければ、詐欺師さぎしもかえってぜにを与う」というのでありまして、これもってみても、私の文名たるや、それは尊敬の対象では無く、呆れられ笑われ
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
しかし一銭だろうが五厘だろうが、詐欺師さぎしの恩になっては、死ぬまで心持ちがよくない。あした学校へ行ったら、一銭五厘返しておこう。おれはきよから三円借りている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御用心ごようじんあそばさないといけません。あの童子どうじ詐欺師さぎしでございます。おそれながら、陛下へいかのおやまい侍医じい方々かたがたや、わたくしども丹誠たんせいで、もうそろそろ御平癒ごへいゆになるときになっておりました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
(世間の全部が、詐欺師さぎしではない)
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしここの亭主が詐欺師さぎしであって我輩を置き去りにして荷物だけ取って行ったとすれば我輩はアンポンタンの骨頂でさぞかし人に笑われるだろうと気がついた。やがて門の戸のあく音がする。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さあ、詐欺師さぎし証拠しょうこあらわれましたぞ。中をはやくおあけなさい、はやく。」
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)