許可ゆるし)” の例文
と云うようなはなしになって、それでは、帰国した上で、双方の主君の許可ゆるしを得て、改めて、日もきめよう、結納ゆいのうも交そうとなった。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芳子が父母に許可ゆるしを得て、父にれられて、時雄の門をおとのうたのは翌年の二月で、丁度時雄の三番目の男の児の生れた七夜の日であった。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
『届けもしないで、無断で休むといふ法は無い。休むなら、休むで、許可ゆるしを得て、それから見送りに行け——斯う校長先生が言ふのさ。』
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
書中には田崎帰りていささか安堵あんどせるを書き、かついささか話したき事もあれば、医師の許可ゆるし次第ひとまず都合して帰京すべしと書きたり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
わたくしも母や兄の許可ゆるしをうけて、七月の末になったらばきっと行くことに約束してしまいました。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雲飛うんぴ許可ゆるしを得て其片々へんぺん一々ひとつ/\ひろつて家に持歸もちかへり、ふたゝ亡父なきちゝはかをさめたといふことである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
(芸者はおよしなさい。)……この後たとい酒井さんのお許可ゆるしが出ても、私が不承知よ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
武村兵曹たけむらへいそう此時このとき大佐たいさ許可ゆるして、つぎへやから一面いちめん製圖せいづたづさへてて、卓上たくじやう押廣おしひろ
と言ふ許可ゆるしが出て、奧樣から燐寸マツチを渡された時、お定は甚麽どんなに嬉しかつたか知れぬ。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかし家主おおやが一軒置いて隣にありましたので、小田さんは許可ゆるしを得てきて、私たちは、空き家の中に入りました。表の戸には錠が下ろしてなく、家の中はずいぶん荒らされておりました。
紫外線 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
乳母 おまへ今日けふはお參詣まゐりてもいといふお許可ゆるしましたかえ?
「それは申上げられませぬ。嬢次様のお許可ゆるしを受けませねば……」
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
よって許可ゆるしを受け、火葬いたし、骨を御送おんおくり申し上げ候。しかるべく御葬り置きくだされたく願い奉り候。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
『よろしい。』と艦長かんちやう許可ゆるして、水兵すいへいはやをら武村兵曹たけむらへいそうまなこてん
『貴樣は誰の許可ゆるしを得て入つたか?』
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)