葉柳はやなぎ)” の例文
水のかれた川は、細いながらも、太刀だちのように、日を反射して、絶えてはつづく葉柳はやなぎと家々との間に、かすかなせせらぎの音を立てている。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
慇懃いんぎんにいいながら、ばりかんを持って椅子なる客のうしろへ廻ったのは、日本橋人形町どおりの、茂った葉柳はやなぎの下に、おかめ煎餅せんべいと見事な看板を出した小さな角店を曲って
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うち向ふ暗き葉柳はやなぎ震慄わななきつ、さは震慄わななきつ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
殊に狭苦しい埠頭ふとうのあたりは新しい赤煉瓦あかれんがの西洋家屋や葉柳はやなぎなども見えるだけにほとん飯田河岸いいだがしと変らなかった。
湖南の扇 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
うつくしきひとの、葉柳はやなぎみのたる忍姿しのびすがたを、落人おちうどかとれば、あにらんや、あつ情思おもひ隱顯ちら/\ほたるすゞむ。きみかげむかふるものは、たはれをそか、あらず、大沼おほぬまこひ金鱗きんりんにしてひれむらさきなるなり
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかい葉柳はやなぎ並木路アベニユ撒水みづまきした煉瓦道れんぐわみち
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ひょろ長い葉柳はやなぎが一本、このごろはやる疫病えやみにでもかかったかと思う姿で、かたばかりの影を地の上に落としているが、ここにさえ、その日にかわいた葉を動かそうという風はない。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ながむれば葉柳はやなぎつづき
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
見ると実際さっきの車は、雨を待っている葉柳はやなぎが暗く条を垂らした下に、金紋のついた後をこちらへ向けて、車夫は蹴込けこみの前に腰をかけているらしく、悠々と楫棒かじぼうを下ろしているのです。
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)