芍藥しやくやく)” の例文
新字:芍薬
しづかな山の手の古庭に、春の花は支那の詩人が春風二十四番と數へたやう、梅、連翹れんげう、桃、木蘭、藤、山吹、牡丹、芍藥しやくやくと順々に咲いては散つて行つた。
花より雨に (旧字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
蛇苺へびいちご芍藥しやくやくゆきした、もつとおとなしい隱立かくしだてよりも、おまへたちのはうがわたしはすきだ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
龍虎梅竹りうこばいちく玉堂富貴ぎよくだうふつき、ナソレ牡丹ぼたん芍藥しやくやくすゝきらんこひ瀧登たきのぼりがとふと、ふな索麺さうめんつて、やなぎつばめを、さかさまけると、あしがんとひつくりかへる……ヨイ/\とやつでさ。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
眼を誘ひ、げに初夏はつなつ芍藥しやくやく
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ときたびに、色彩いろきざんでわすれないのは、武庫川むこがはぎた生瀬なませ停車場ていしやぢやうちかく、むかあがりのこみちに、じり/\としんにほひてて咲揃さきそろつた眞晝まひる芍藥しやくやくと、横雲よこぐも眞黒まつくろに、みねさつくらかつた
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
芍藥しやくやく腕套うでぶくろに包んだ手で、しきりに皮肉をいてゐる。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)