ぶく)” の例文
かたくびよりたかそびえて、ぞく引傾ひきかたがりと代物しろものあをぶくれのはらおほいなるうりごとしで、一尺いつしやくあまりのたなちりあまつさびつこ奈何いかん
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そしてその右には赤ぶくれに肥った真裸体まっぱだかの赤ん坊が座って、糸も何も張って無い古月琴げっきんを一挺抱えて弾いていた。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
いつでも喧嘩けんかになってしまう。与吉がなんだあおぶくれと下から云うと、喜いちゃんは上から、やあい鼻垂らし小僧、貧乏人、と軽侮さげすむように丸いあごをしゃくって見せる。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
襖紙からかみを開けて、いそいそと入って来たのは、主人の佐吉、まだ二十四、五の若々しい年輩で古渡り唐桟の袷に紺博多の帯、月代さかやきの跡青々と、しもぶくれのおっとりとした美男です。
床の前を右へはずして、菓子折、サイダア、砂糖袋、玉子の折などの到来物が、ずらりと並んでいる箪笥たんすの下に、大柄な、切髪の、鼻が低い、口の大きな、青んぶくれに膨れた婆が
妖婆 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
が、顔は太っていると云うよりはあおぶくれにふくれていて、それがむうッと、怒っているような感じを与える。おまけに眼瞼まぶたの脹れぼったそうにむくんでいるのが、一層その相を険しくしている。
蘿洞先生 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
近所には別のあおぶくれの看護婦が、しきりに編物をしていたが、彼女は編物趣味の時間を楽しんでいるわけであって、管轄かんかつちがいのベッドに寝ている私の立居振舞たちいふるまいについては、まったく無関心だった。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女は、手近てぢかに居たあおぶくれの看護婦にいた。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)