細帯ほそおび)” の例文
旧字:細帶
為様しやうがないねえ、)といひながら、かなぐるやうにして、細帯ほそおびきかけた、片端かたはしつちかうとするのを、掻取かいとつて一寸ちよいと猶予ためらふ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただ幾分か優しいように着こなすだけであって着物の仕立方したてかたは同じ事である。帯は幅一すん位、たけは八尺位、まあ細帯ほそおびのようなものです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
○さておしきたりし男女まづ普光寺ふくわうじに入りて衣服いふく脱了ぬぎすて、身に持たる物もみだりに置棄おきすて婦人ふじん浴衣ゆかた細帯ほそおびまれにははだかもあり、男は皆はだかなり。
すると、なにかやわらかなものが、忍剣のほおをなでてははなれ、なでてははなれするので、かれはうるさそうにそれを手でつかんだ時、はじめて赤いきぬ細帯ほそおびであったことを知った。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○さておしきたりし男女まづ普光寺ふくわうじに入りて衣服いふく脱了ぬぎすて、身に持たる物もみだりに置棄おきすて婦人ふじん浴衣ゆかた細帯ほそおびまれにははだかもあり、男は皆はだかなり。
きり田川たがわの水を、ほのじろい、ざるき/\、泡沫あわを薄青くすくひ取つては、細帯ほそおびにつけたびくの中へ、ト腰をひねざまに、ざあと、光に照らして移し込む。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五ばんにをどりの者大勢花やかなる浴衣ゆかたに(正月なれど人勢に熱喿あつくてゆかた也)色ある細帯ほそおびをなし群行むらがりゆく里言りげんにこれをごうりんしやうといふ、こは降臨象こうりんしやうなるべし。
お幾は段を踏辷ふみすべらすようにしてずるりと下りて店さきへ駆け出すと、欄干てすりの下を駆け抜けて壁について今、婆さんの前へと来たお米、素足のままで、細帯ほそおびばかり
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)