いき)” の例文
新字:
……ついあひだとんさんにつて、はなしると、十圓じふゑんおどかすより九九九くうくうくうはうが、音〆ねじめ……はいきぎる……耳觸みゝざはりがやはらかで安易あんいい。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
浴衣は秋草を染め出した中形で、なか/\にいきなものですが、袖を半分から下、刄物で切り捨て、下の方には物凄いほど血が飛沫しぶいてをります。
いきがつたり、つうがつたりする趣味は全然無かつたし、女と見れば物にしないでは置かない人々の所業も、彼の内部にひそむ人道主義が許さなかつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
は、は、これでは浴場美術おふろばびじゆつではなく浴場哲學? になつちまふ。せめていきな女の人だけは、おふろにはいる時も、小唄の女の氣持ちでね、なんて、千九百三十年なのに——
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
暢然ゆつたり歩いたり、急いで歩いたり、電車にも乘つたし、見た事のない、狹い横町にも入つた。車夫にも怒鳴られたし、ミルクホールの中を覗いても見た。一町ばかりいきな女の跟をつけても見た。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
いきなところが、ひとつも無い。
お伽草紙 (旧字旧仮名) / 太宰治(著)
何方かにするが宜い——あのいきな渡し島田を剃り落すのは可哀相だが、首が無くなるよりはそれでもましだらう。
名案めいあんはないかな——こゝへ、下町したまちねえさんで、つい此間このあひだまで、震災しんさいのためにげてた……元來ぐわんらい靜岡しづをかには親戚しんせきがあつて、あきらかな、いき軍師ぐんしあらはれた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その婦人が勝れて美しいといふ方では無かつたけれど四圍と調和しない程いきなからだつきで、泣いた頬におくれ毛のへばりついたまゝ、冷々として見送の人を見てゐたのである。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「一軒目は學者で、都々逸どゞいつも雜俳も心得てゐる、恐ろしくいきな先生。足も身體も惡いが、昔は御武家だつたさうで、大澤傳右衞門、お家を狙ふ曲者見たいな名をして居る」
いきで、世間馴てゐて、人一倍情愛が深く、一口にいへばすゐも甘いも噛みわけた人だらうと想い描いて居たのであつたが、現實の作家は、骨組のたくましい髯男で、みなりなんぞはぢゞむさく
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
成程、俳諧はいかいの一つ位はひねりさうな、質屋の亭主にしては、肌合のいきな男。錢形の平次と聞いて、いくらか冷靜さを取戻したものか、身投女の後ろから、こんな事を言つて居ります。
何處がいきなんだか、すつきりしてゐるのだかわからなかつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
お靜の着換きがへには相違ありませんが、お樂が着ると、銘仙も木綿もいきになるのでした。洗ひ髮に、赤い/\唇、猪口にさはると其儘酒も紅になりさうな、それは何といふ官能的な魅惑みわくでせう。