神殿しんでん)” の例文
薄暗い神殿しんでんの奥にひざまずいた時の冷やかな石の感触かんしょくや、そうした生々しい感覚の記憶の群が忘却ぼうきゃくふちから一時に蘇って、殺到さっとうして来た。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
と、四つンばいになって、のこのこはいこんだのは、八神殿しんでん床下ゆかした藁蓙わらござを一枚かかえこんで、だんだんおくのほうへいざってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神殿しんでんの前にいろんなごちそうが並んでいますところに、大きなきつねが一匹うずくまっていて、ぺろぺろごちそうを食べています。
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
靖国神社やすくにじんじゃ神殿しんでんまえへひざまずいて、清作せいさくさんは、ひくあたまをたれたときには、すでに討死うちじにして護国ごこく英霊えいれいとなった、戦友せんゆう気高けだか面影おもかげがありありと眼前がんぜんにうかんできて
村へ帰った傷兵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただベスビオの山だけは、あいもかわらず永遠の讃歌さんかをとどろかしていました。その一つ一つの詩句を、人間は新しい爆発ばくはつと呼んでいるのです。わたしたちはビーナスの神殿しんでんに行きました。
ほがらにむや神殿しんでん
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
神慮しんりょをおそれぬばちあたり、土足どそく、はだかの皎刀こうとうを引っさげたまま、酒気しゅきにまかせてバラバラッと八神殿しんでん階段かいだんをのぼりかけた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お宮のまわりの森も、草が抜かれ枯枝かれえだが折られ、立派なみちまで出来て、公園のようになりました。朝と晩には、神殿しんでんの前にお燈明とうみょうがあげられました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
てめえこそこの島からだされると、また八神殿しんでん床下ゆかしたで、お乞食こじきさまのまねをするより道がねえので、それで、おとなしくしていやがるンだろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)