)” の例文
心持照れ臭さげにしながらも、盛子は快活などこか家庭的なつかりさといつた風なものを現して、この一日造りの漁師達を眺めた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
碧色の瞳は何処と信ってっかり見詰めないような平静な光りをただよわせて居る。が、時折り突き入るようにとがってきらめくこともある。
決闘場 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
白刃一閃、そこを藤吉、足を上げて蹴る、起きる、暗いから所在ありかもよくは解らないが、猛然と跳りかかったら、運よくかと抱きついた。
モリに太い綱をつけて、その端をかと岩角へ結びつけ、春光に背を暖めながら昼寝してゐる牝に、グサとモリを打込んだ。牝牡は共に仰天した。
東京湾怪物譚 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
しとやかだと云ふだけでは済まない、非常時に際して充分適当な態度をとれるやうつかりした女にならなくてはいけないと云ふやうな事も教へます。
内気な娘とお転婆娘 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
その刺叉形さすまたがたをした鬼箭おにやが、かと棧の間に喰い入っていたので、また後尾の矢筈やはずに絡みついている彼女の頭髪も、これまた執拗に離れなかったので
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それからかとききとれない叫喚が原因不明のけたたましい物音と前後して響いてきた。それは弥生の声であつた。改めて草吉を呼んだ声もきこえた。
蒼茫夢 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
かと肯定した眼差しです。少し痩立やせだちの淋しい姿ですが、目鼻立ちも端麗に、いかにも聡明そうで、道楽者の半次郎には、幾らか煙たがられるといった様子があります。
幾筋かの針金をより合せた太い綱索が大きな岩にかと巻き付けて雪渓に垂れ下げてある。夫を手繰って下を覗き込むと、谷も狭しと拡がった大雪渓が涯もなく続いている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
独逸ドイツ語ですって澄ましたものだ、それから今度は調子にのって、御前の言葉は文法がちがう、こう云うんだろうなんて、一々いちいち混ぜかえすと、っかりした根柢はないんだから、散々考えて
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
「弱ッちまッちゃいけない。それじゃ亭主に逢えんぞ。ッかりしなさい」
で、その糸をうんとつかりとしたものにしなければならない。そこでじよらうぐもは、糸の両端をよく粘りつかせる。それから一方の端からも一方の端へと糸の上を行つたり来たりしはじめる。
「しっかり抑えていて頂戴よ。そう、両脚をね、っかりとね」
人間製造 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
雪雲に閉ざされた空をかとつかんでいるように見えた。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
之をまともにかと見て、巧みに避けしヘクトール
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
海外貿易もその一つである。嘉六という番頭がっかりもので、理兵衛の妻も外戚の能登屋のおじというのも下町式にいわゆる出来た人物である。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
少しつかりしてゐるものなら、たとへ口へ出して詰責しないまでも、態度でなじれば大抵逃げて行くものなのです。
内気な娘とお転婆娘 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
滲み出る汗と共に何かしら揉まれしぼり出される身内の或る物——それらは彼の幼時の記憶につかりと結びついて、その頃の漠とした幸福感を近々と思ひ出させた。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
反対の端の方には三尺ほどの丈夫な真田紐さなだひもかと結えてあったのです。
「あの年寄りはつかり者だから」と言つたが、卯女子にはその意味が解るやうで解らなかつた。
鳥羽家の子供 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
離して逃げられでもしたらと用心してっかり握りしめてついて来た加奈江は、必死に手に力をこめるほど往時むかしの恨みがき上げて来て、今はすさまじい気持ちになっていた。
越年 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
かとは申し上げられませんが、あれほどあざやかな藝當は、女一人の手で出來るわけは御座いません。それにあの繼母のお瀧つて女は、どうしてもそんな惡婆とは思はれないので御座います」
お前が第一つかりしてゐないからこの年になつて、嫁にまで馬鹿にされるのだよ、自分さへのんきにしてゐれば、他人はどうでも構まはない気かもしれないけれど、さうはなか/\ゆきませんよ
惑ひ (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
気儘きままな妄想を払つて不具に直面し、不具の実在性をつかり見詰めよといふのであつた。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
かとは申し上げられませんが、あれほど鮮やかな芸当は、女一人の手で出来るわけはございません。それにあの継母のお滝って女は、どうしてもそんな悪婆あくばばとは思われないのでございます」
その中に野や山と同じに自然につかりと地面に立つて現れる物がある。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
北国寄りのF——町の表通りに、さまで大きくはないがっかりした呉服店の老舗があった。お蘭という娘があった。四郎はこの娘が好きでF——町へ来ると、きっとこの呉服店へ立寄った。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
阿闍梨『して、引換えの礼物ほ、かと持参いたしたな』
取返し物語 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)