目下いま)” の例文
たゞかれ目下いま幾部分いくぶぶんでも要求えうきうすることが、自分じぶんいた主人しゆじんうちたいしてとてくちにするだけの勇氣ゆうきおこされなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うまでもなく道徳円満、ただしその細君は三度目で、さきの二人とも若死をして、目下いまのがまた顔色が近来、あおい。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは目下いまの所じゃわるくないかもしらんがの、わたしはよウく医師おいしゃから聞いたが、この病気ばかいは一ときよかってもまたわるくなる、暑さ寒さですぐまた起こるもんじゃ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
このマクドオナルドは——彼自身の説明によると——経験ある航海家で、目下いまは、ニュウ・ジイランド冷凍肉会社に雇われて、冷蔵船コルコラン号の船長をしているとのことだった。
消えた花婿 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
目下いま持上つてゐる縁談が、種々いろいろの事情があつて両親始め祖父おぢいさんまでが折角勧めるけれど、自分では奈何どうしてもく気になれない、此心をよく諒察くみとつて、うまく其間に斡旋あつせんしてくれるのは
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
目下いまはひたすら、剣技をみがきます一心——。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これはたぶん、目下いまの歌舞伎座のあたりであったろう。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
那樣事そんなことらぬな。わし目下いま空模樣そらもやうさへおまへさんにかれたので、やつといたくらゐぢやもの。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
並んで四軒、稲葉家の隣家となり目下いま空家で、あとの二軒も、珍しく芸者家ではない。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)