皺手しわで)” の例文
こけの生えたおけの中から、豆腐とうふ半挺はんちょう皺手しわでに白く積んで、そりゃそりゃと、頬辺ほっぺたところ突出つきだしてくれたですが、どうしてこれが食べられますか。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つと乗出のりいだしてそのおもてひとみを据ゑられたる直行は、鬼気に襲はれてたちまち寒くをののけるなり。つくづくと見入るまなこを放つと共に、老女は皺手しわでに顔をおほひて潜々さめざめ泣出なきいだせり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
人形使 (ものいわず、皺手しわでをさしのべて、ただ招く。招きつつ、あとじさりに次第に樹立にる。)
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
夫人 (人形使の皺手しわでを、脇に掻込かいこむばかりにして、先に、番傘をかざして、揚幕へ。——)
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
真黒まっくろな影法師のちぎれちぎれな襤褸ぼろて、茶色の毛のすくすくとおおわれかかる額のあたりに、皺手しわでを合わせて、真俯向まうつむけに此方こなたを拝んだ這身はいみばばは、坂下のやぶ姉様あねさまであった。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あかはかまにて膝行いざり出で、桶を皺手しわでにひしとおさえ、白髪しらがを、ざっとさばき、染めたる歯をけたに開け、三尺ばかりの長き舌にて生首の顔の血をなめる)汚穢や、(ぺろぺろ)汚穢やの。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
皺手しわで呼吸いきをハッとかけ、斜めにちょうと鑿を押えて、目一杯に海を望み
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ええ!」と思わず、皺手しわでをかけたは、真綿のようなお町の手。
白金之絵図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
皺手しわでひざへ組んで、俯向うつむいて口をむぐ/\さして
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
翁は耳を傾け、皺手しわでを当てて聞いた。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)