)” の例文
この顔は昨夜ゆうべ見たほど妙でもなかった。しかし額がさかにけて、脳天まで長くなってる事は、今朝でも争われない。熊さんは床の中から
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
外の椽側えんがわに置いた手燭てしょくが暗い庭をななめに照らしているその木犀もくせいの樹のそば洗晒あらいざらしの浴衣ゆかたを着た一人の老婆が立っていたのだ、顔色は真蒼まっさおで頬はけ、眼は窪み
暗夜の白髪 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
さうしてはれたあとでは、折々をり/\そつと六でふ這入はいつて、自分じぶんかほかゞみうつしてた。其時そのときなんだか自分じぶんほゝたびけてやうがした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
亭主は五十恰好かっこうの色の黒い頬のけた男で、鼈甲べっこうふちを取った馬鹿に大きな眼鏡めがねを掛けて、新聞を読みながら、いぼだらけの唐金からかねの火鉢に手をかざしていた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その時始めて気が付いて見ると、父の頬が何時の間にかぐっとけていた。元来が肉の多い方だったので、この変化が代助には余計目立って見えた。代助は覚えず
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うしろからかすめて来る日影に、あおい頬が、気のせいか、昨日きのうより少しけたようだ。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
るのに御苦労だつた」といたはつて呉れた。其時始めて気がいて見ると、ちゝほゝ何時いつにかぐつとけてゐた。元来がにくの多い方だつたので、此変化が代助には余計目立つて見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御米は実際そうかも知れないと思った。そうしてこう云われた後では、折々そっと六畳へ這入はいって、自分の顔を鏡に映して見た。その時は何だか自分のほおが見るたびにけて行くような気がした。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
兄の顔には孤独のさみしみが広い額を伝わってけた頬にみなぎっていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)