生皮なまかわ)” の例文
かえる生皮なまかわをはいだり、蛇を半殺しにして喜ぶのは大人の同感し得ない子供特有の趣味です。そして、この殺生には全然何の理由もないのです。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だが親方おやかたわるいこたァいわないから、滅多めったけるなァおしなさいよ。そこをけたにゃ、それこそ生皮なまかわにおいで、隣近所となりきんじょ大迷惑おおめいわくだわな
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
窟の入口には薄黒い獣の生皮なまかわを敷いて、エッキスという字のように組まれた枯木と生木なまきとが、紅い炎焔ほのおや白いけむりを噴いていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今日では石油を襤褸ぼろに浸していぶすものであるが、以前は竹の串に髪の毛を少しわがねてはさみ、その片端を焦がしたもの、あるいは野猪のじし生皮なまかわを一寸角ばかりに切って
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
仲たがいさせるまでは決して帰って来るな。でないとお前たちの生皮なまかわひんむいでしまうぞ。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
そんなばかなことがあるものか、いくら強い動物だからと言って、全身の生皮なまかわを剥がれて、それで生きていられるはずがあるものか、ましてそれで歩ける道理があるものか、途方もないことを
「頼兼のめかけ千寿めには、熊の生皮なまかわをうちかぶせ……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
生皮なまかわあさ旃陀羅せんだらにぶの色
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おいらァ泥棒猫どろぼうねこのように、垣根かきねそとでうろうろしちゃァいねえからの。——それな。鬼童丸きどうまる故智こちにならって、うし生皮なまかわじゃねえが、このいぬかわかぶっての、秋草城あきくさじょうでの籠城ろうじょうだ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
すでにして又来たるを見れば、さきの皮一枚は、藤を以てつなぎ合せて背に負ひ、他の一枚は腰に巻き付けたり。されど生皮なまかわを其のまゝ着たる故、乾くにつれて縮みよりこわばりたり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
一方の狗熊を殺してその生皮なまかわを剥ぎ、すぐに自分の肌の上を包んだので、人の生き血と熊の生き血とが一つにねばり着いて、皮は再び剥がれることなく、自分はそのままの狗熊になってしまった。
「六歳になる小伜には、猪の生皮なまかわをうちかぶせ……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「そりゃァそうだ。こんな生皮なまかわのようなにおいおんなにおいでたまるもんか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
身には縞目しまめも判らぬような襤褸ぼろの上に、獣の生皮なまかわまとっていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)