猛然もうぜん)” の例文
「いけない」と文子は猛然もうぜんと思い返した、母に禁ぜられたものを食べること、他人のご馳走ちそうになること、これはつつしまねばならぬ。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
一行はじめて団結だんけつ猛然もうぜん奮進にけつす又足を水中にとうずれば水勢ます/\きうとなり、両岸の岩壁いよ/\けんとなり、之に従つて河幅はすこぶちぢま
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
官兵衛はつづいて、猛然もうぜんと、廊の外へ出ようとしたが、もういけなかった。荒木村重の家臣が素槍すやりをそろえて来たのである。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猛然もうぜん突進とっしんしていったはずの機関車が、急に速力もおとろえ、やがて反対にジリジリと後へ下ってくるのでありました。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふいをくらったいぬは、よろよろとよろめいたが、こんどは、猛然もうぜんとうなりごえをあげ、もう一度男におそいかかったとみるや、その足に、がぶりっとかみついた。
猛然もうぜん立ちあがった糟谷はわが子を足もとへたおし、ところきらわずげんこつを打ちおろした。芳輔はほとんど他人たにんとけんかするごとき語気ごき態度たいど反抗はんこうした。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
モンクスは猛然もうぜん突進とっしんしてきた。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
穴山あなやまの四天王てんのう猪子伴作いのこばんさく足助主水正あすけもんどのしょう、その他の郎党ろうどうは、民部が神のごとき采配ぶりにたちまち頽勢たいせいりかえし、猛然もうぜん血槍ちやりをふるって追撃ついげきしてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふいをうたれた巡査じゅんさは、一瞬いっしゅんたじろいだが、猛然もうぜんと男にくみついていった。
大きなつばさで海面をたたいたかと思うまに、ギャーッと一声ひとこえ、すごい絶鳴ぜつめいをあげて、猛然もうぜんと高く飛び上がった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
猛然もうぜんとおどりかかッて、伊那丸の胸板むないたへ突いていったが、ヒラリとかわして凛々りんりんたる一かつもと
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)