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燒趾
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やけあと
東隣の
主人の
庭には
此の
日も
村落の
者が
大勢集まつて
大きな
燒趾の
始末に
忙殺された。それで
其人々は
勘次の
庭に
手を
藉さうとはしなかつた。
燒趾の
灰から
出て
青銅のやうに
變つた
銅貨はぽつ/\と
燒けた
皮を
殘して
鮮かな
地質が
剥けて
居た。
彼はそれを
目に
近づけて
暫く
凝然と
見入つた。
おつぎは
燒趾の
始末の
忙しい
間にも
時々卯平を
見た。
然し
卯平を
慰めるに一
錢の
蓄へもないおつぎは
猶且何の
方法も
手段も
見出し
得なかつたのである。