なけ)” の例文
あけしに驚きさす旅宿屋やどやの主人だけよひことわりもなき客のきふに出立せしはいかにも不審ふしんなりとて彼の座敷をあらためしにかはる事もなければとなり座敷を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
彼女は、何かこうシッカリとつかまる物でもなければ、自分の弱い体躯からだまで今に何処へか持って行かれて了うような眼付をした。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しいきくでもなけれど此儘このまま別れては何とやら仏作って魂入れずと云う様な者、話してよき事ならばきいた上でどうなりと有丈あるたけの力喜んで尽しましょうといわれておたつ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一 松島の松にからまるちたの葉も、えんがなけれやぶろりふぐれる〻
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
する者もなけれど誰しも欲の世の中なれば身上の太きにめで言込者いひこむものも又多かり然共持參金の不足よりいつも相談とゝのは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おれは当人じゃなければ取計いかねるとおっしゃるならば其男そのおとこに逢いましょ。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
サア夫はのつめ臺詞ぜりふ忠兵衞今は詮方せんかたなければ左樣御座らば此由を若旦那へ一おう話してと云ども主個あるじは更にきかず何の息子せがれに話すに及ばう如何いかに戀慕こひしたふ美人でも覆轉ひつくりかへつてあわ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)