無尽むじん)” の例文
旧字:無盡
『御内方には、頼母子講のようなものに入っておいでないのか。月々、懸金かけきんをして、何ぞの場合にまとめて取る無尽むじんと申すあれなどには』
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんだかこはいやうね。——さうさう、いつかあつたぢやないの? 千円かの無尽むじんにあたつて発狂はつきやうしたといふおぢいさんが……」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
權「はい、あのくらい運のい男はねえてね、民右衞門たみえもんさまでございましょう、無尽むじんが当ってすぐに村の年寄役を言付かったって」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
まさかに無尽むじんを作って傾きかけた家産を救うことも出来ないところから、思い余ってその窮状を三代将軍家光公に訴えました。
彼女が泣きながら訴えるのを聞くと、お光の奉公している三河屋のお内儀かみさんは、よんどころない義理で二十両取りの無尽むじんにはいっていた。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
煩悩ぼんのうの氷厚ければ、これを割る仏の慧日、光芒をいや増す。憎悪ぞうお無尽むじんならば、これを解く仏の慈悲もまた無尽である。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
畠の横を通り過ぎて家の方へ行く彦太郎の背後から、顔も上げずに無尽むじん会社が来とったですよ、と一言云ったきりのろくさい手附でしきりと草をむしりつづけていた。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
走りやっこ久太きゅうたが、三がにちの町飾りや催し物の廻状かいじょうを持ってきたあとから、かしらの使いが借家の絵図面を届けてくる。角の穀屋こくや無尽むじんの用で長いこと話しこんで行ったばかりだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
福島の勘定所から依頼のあった仕法立しほうだての件で、馬籠まごめ宿しゅくとしては金百両の調達を引き請け、暮れに五十両の無尽むじんを取り立ててその金は福島の方へ回し、二番口も敷金にして
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
路傍ろぼうの淫祠に祈願をけたお地蔵様のくび涎掛よだれかけをかけてあげる人たちは娘を芸者に売るかも知れぬ。義賊になるかも知れぬ。無尽むじん富籤とみくじ僥倖ぎょうこうのみを夢見ているかも知れぬ。
「お前ほんとに済みませんがね、今月の無尽むじんの掛金に困っているものだから……」
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「ヘエ。当主があんまり正直過ぎて無尽むじん詐欺に引っかかったんだそうで……」
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それじゃ、富籤とみくじか、無尽むじんか、——まさか拾ったんじゃあるまいな」
これからちょうど、その無尽むじんり札が始まろうというところ、身共の手に、首尾しゅびよく札が落ちたら、その上で御相談しようではないか
死んだ千鳥 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
○「困るだろうねえ無尽むじんを取って来たから……取って来たって割返しだよ、当れば沢山たんと上げるがたった六十四文ほきゃアないが是をお前にわしが志しで」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
村方の無尽むじんをまとめることなぞにかけてはなくてならないほど奔走周旋をいとわない人物だが、こんな話の出る時にはたったりすわったりして、ただただ聞き手に回ろうとしている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
半七がいつもより早くうちへ帰って、これから夕飯をすませて、近所の無尽むじんへちょいと顔出しをしようと思っていると、小さい丸髷に結った四十ばかりの女が苦労ありそうな顔を見せた。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
恩返シニハ少シデモ無尽むじんヲシテ、掛捨テニシテヤロウカ、ソウ云ッテハ取ラヌカラ、勝ヲ会主ニスルガイイト相談シテ、鈴木新二郎ト云ウ井上ノ弟子ノ免許ノ仁ガ来テ、オレニ云ウニハ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
旱魃ひでりの氷屋か貧乏人が無尽むじんでも取ったというようににやり/\と笑いながら、懐中から捲出まきだしたは、鼠色だか皮色だか訳の分らん胴巻様どうまきよう三尺さんじゃくの中から
きょうお寄りしたのはほかでもありませんが、実は無尽むじんを思い立ちまして、上の伏見屋へも今寄って来ました。あの金兵衛さんにもお話しして来ました。半蔵さん、君にもぜひお骨折りを願いたい。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
新「私は無尽むじんのまじないに、なにそう云う仏様に線香を上げると無尽が当ると云うので、ヘエ有難う存じます」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)