“烏滸(をこ)” の例文
傍(かたはら)なるバルザツク忽ちその語を遮(さへぎ)つて云ひけるは、「君の我等に伍せんとするこそ烏滸(をこ)がましけれ。我等は近代文芸の将帥(しやうすゐ)なるを」
濁醪(どぶろく)を引掛(ひつか)ける者が大福(だいふく)を頬張(ほゝば)る者を笑(わら)ひ売色(ばいしよく)に現(うつゝ)を抜(ぬ)かす者が女房(にようばう)にデレる鼻垂(はなたらし)を嘲(あざけ)る、之れ皆他(ひと)の鼻(はな)の穴(あな)の広(ひろ)きを知(しつ)て我(わ)が尻(しり)の穴(あな)の窄(せま)きを悟(さと)らざる烏滸(をこ)の白者(しれもの)といふべし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵、三文字屋金平(著)
烏滸(をこ)の者ども朕を如何にか為し得べき、心とゞめてよく見よや、見よ、やがて此世は修羅道(しゆらだう)となり朕が眷属となるべきぞ、あら心地快や、と笑ひたまふ御声ばかりは耳に残りて
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
私……こんな事を申しては……烏滸(をこ)がましいので御坐いますが、大した事は出来ませんけれど、都合の出来るだけは御用達申して上げたいのでございますが、さう遊ばしませんか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
されどかかる烏滸(をこ)のしれもの果して喜んで記實の文を讀むを必とすべきか。これもいと/\覺束(おぼつか)なし。一世の傾向を釀さむとするものは積極なる教育の道に由るべきは、固より其所なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
烏滸(をこ)がましき似非経文(えせきやうもん)よな。本来諸法が空相なら、何ぞ空(くう)を空ずるの相あらむや。誠や大神でいゆすは之れ天地能造の主、人類の起源。抑も天地虚曠晦冥、でいゆす光あれと呼べば即ち光あり。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
知らずや、かゝる雄誥(をたけび)の、世に類(たぐひ)無く烏滸(をこ)なるを
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
木片の薬師、銅塊(どうくわい)の弥陀(みだ)は、皆これ我が心を呼ぶの設け、崇(あが)め尊まぬは烏滸(をこ)なるべく、高野の蘭若(らんにや)、比叡(ひえ)の仏刹(ぶつさつ)、いづれか道の念を励まさゞらむ、参り詣(いた)らざるは愚魯(おろか)なるべし。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
知らずや、かゝる雄誥(をたけび)の、世に類(たぐひ)無く烏滸(をこ)なるを
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)