わか)” の例文
猛烈な鮮新フレツシユな力の妄動まうどうである。其れに対すると僕までが血をわかし、肉が引緊ひきしまる程に力強さを覚える。果して僕にも其れだけ活力ヸタリテがあるか、うか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
それから里朝りちょうの曲弾も首尾よく相済んだ跡は、お定まりの大小芸妓の受持となって、杯酒しおわかすと昔は大束に言って退のけたが、まこと逆上返のぼせあがる賑いで
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
勘次かんじぜに自分じぶんからわかすやうにして辛抱しんばうしてりやつらいことばかりいから、なんでも人間にんげん子供次第こどもしだいだよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかしいて過去にこれを求めるなれば、押川春浪おしかわしゅんろう氏の『海底軍艦』などが若き読者の血をわかした時代、つまり明治四十年前後がそうであったようにも思われる。
『地球盗難』の作者の言葉 (新字新仮名) / 海野十三(著)
毎日二時過ぎると小さなおかまでお湯をわかして、たらいへ行水のお湯をとってくれた。私は裏からも表からも見透みすかしの場処でのんきに盥の中へ座る。雨蛙にもお湯をぶっかける。
まなこは痛恨の涙をわかして、彼は覚えず父のおもてにらみたり。直行は例のうそぶけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
私は大きな松の実のやうな菜果を手探りで皮を一枚づゝぎ、剥げ根にちよつぽりかたまつてついてゐる果肉に薬味の汁をつけて、その滋味を前歯でき取ることにこどものやうな興味をわかしながら
過去世 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
富山へ来ると、例の噂がう一面にひろがっていて、各新聞にも精細の記事が掲げられていた。読んで見るとなるほど大変である。が、彼はの大変に驚くと同時に、この事件について一種の興味をわかした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
かくわづかに応ふるのみにて、母は自らわかせる万感の渦のうちに陥りてぞゐたる。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)