清水きよみづ)” の例文
立出三條の龜屋と云る旅籠屋はたごや宿やどりしに當所は大坂と違ひ名所古跡も多く名にし平安城へいあんじやうの地なれば賑しきこと大方なら祇園ぎをん清水きよみづ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
近くの大仏、三十三間堂あたりから順々に、清水きよみづ、高台寺、祇園、円山、知恩院、太極殿だいごくでん、それからずつと疏水の方まで歩いて行つた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
どちらからとなく、そしてはつきりした理由もなく、死なうと云ふことになり、清水きよみづの山奥で心中を計つたことがある。
現代詩 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
出来できるんですよ。それにね豆のを附けてお婆さんは売りにも行くのです。清水きよみづさんの滝の傍へ茶店を出してねえ。」
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
(供の若者に)わたし達は少し手間取るであらうから、この状を持つて清水きよみづまで一走り行つて來てくれ。
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
だがたま清水きよみづへ参る時はあつてもそんな折には袂の珠数はすつかり忘れてしまつて、松年氏は観音様の前へ立つなり、持合せの両手を合せて、一寸お辞儀をする。
清水きよみづ御寺みてらの内陣にはひれば、観世音菩薩の御姿さへ、その儘侍従に変つてしまふ。もしこの姿が何時までも、おれの心を立ち去らなければ、おれはきつとこがじにに、死んでしまふのに相違ない。
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その年の秋の中頃から、伯父は清水きよみづの方に新しい家を建て始めて居た。伯父はそこで静かに病後の、半生の生活に疲れた身体を養ふつもりであつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
現に京都清水きよみづの成就院では、石榴ざくろのそれのやうな紅い小さな花をもつた椿を「本侘」と名づけて、肥後守が朝鮮から持ち帰つたのは、自分の境内にある老樹だと言つてゐる。
侘助椿 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
しつゝなさあるいへ乳貰ちもらひにおもむ漸々やう/\にしてそだつれ共ちゝたらざれば泣しづむ子よりもなほかなしく思ひ最う此上は神佛しんぶつ加護かごあづかるより他事無しと吉兵衞は祇園ぎをん清水きよみづ其外靈場れいぢやう祈誓きせいかけ精神せいしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
清水きよみづ祇園ぎをんをよぎる桜月夜さくらづきよこよひ逢ふ人みなうつくしき
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
伯父の健康は、清水きよみづの方へ来てから、益〻良くなつて行つた。さうすると、事業好きな彼はぢつとして居なかつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
人にそひて今日けふ京の子の歌をきく祇園ぎをん清水きよみづ春の山まろき
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
坂を上つて少し行くと清水きよみづの通りで、そこの角の所に車の帳場があるのだつた。帳場とは呼んでゐたが、実は顔のきまつた二三の車夫達の共同の駐車場たまりで、いつも必ず車があるとは限らぬのだつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)