浅傷あさで)” の例文
旧字:淺傷
何としても掻き消えない一点の心残りは、かほど犠牲をなげうったひと太刀も、空しく、あいてを逸して、どうやら、浅傷あさでの程度に過ぎないことだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅傷あさでを負わせるか、ともかく、旅を続けられないようにするはずでしたが、親分が相手にならなかったので、それも駄目
刃物きれものも悪かったか横にいだぐれえだから心配しんぺえはねえ、浅傷あさでだったは勿怪もっけ僥倖さいわいなんにしても此処に居ちゃアいけねえから、早く船へお乗んなせえ。
栞をかかえている頼母の姿は、数ヵ所の浅傷あさでと、敵の返り血とで、蘇芳すおうでも浴びたように見えてい、手足には、極度の疲労つかれから来た戦慄ふるえが起こっていた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「一人でだ」と久良馬はうなずいた、「——鋎蔵は討ちとめたが、落合と井関は逃がしてしまった。落合にも一刀あびせたが浅傷あさでだったらしい、残念ながらとり逃がした」
初夜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
米友の網竿あみざおは恐ろしい、死物狂いになって真剣にあばれ出されてはたまらない、深傷ふかで浅傷あさで槍創やりきずを負って逃げ退くもの数知れず、米友は無人の境を行くように槍を突っかけて飛び廻る。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「俺は、思いのほか、浅傷あさでだったので、ひと月も経つと、もとの体にかえったが、何しろ、おめえの傷は、場所がわるい」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
袷の肩先が、はすっかけに裂けて、背中へ二三寸浅傷あさでを受けたんですもの、勘平さんだって間違いっこありません
浅傷あさでだ! 八郎、気を落とすな! ……死なばもろとも、何んで一人で!」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
其の帰り道にのがれ難き剣難あり、浅傷あさで深傷ふかでか、運がわるければ斬り殺される程の剣難ありと、新幡随院の良石和尚という名僧智識の教えに相川新五兵衞も大いに驚き、孝助はまだようやく廿二歳
浅傷あさでではありますが、眉間みけんをはすがけに斬られているので、彼の満面はさながら、べにで顔を洗ったようです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸い聟の錦太郎は浅傷あさでだ、子刻ここのつ(十二時)前に祝言の杯事をして、死んで行く娘を安心させようというのだ
いやいや、おとといの晩、ひそかに出した大物見の一隊が、ただ今、ひどく射ちへらされて、残る七、八名もみな浅傷あさで深傷ふかでを負い、城門まで立帰って来たのでした。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの女の為に身上や名誉を棒に振った男は何人あるかかぞえ切れはしない。俺なんかもその一人さ。自殺したり殺されたりした人間もある筈だから、これでも俺は浅傷あさでの方なんだ
踊る美人像 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
『さよう、傷は二ヵ所、浅傷あさでではあるが、真額まびたいの一太刀、老年のこと故、養生は覚束おぼつかなかろう』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
サッと身をかえすと、眼にも止まらぬ早業で、早くも二三人の捕方は浅傷あさでを負わされた様子。
「た、大変でございます——わたくしは浅傷あさででござりますが、お嬢様が……千浪様が」
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかも一万の残兵も、その三分の一は、深傷ふかで浅傷あさでを負い、続々、落伍してしまう。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真額まびたいの傷、背の傷、浅傷あさでとは聞いたが、御養生はどうであろうか。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御厨ノ伝次を相手に、数ヵ所の浅傷あさでを負わせられていたからだ。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浅傷あさでのものは逃げているので、残ったものには重傷が多い。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深傷ふかでか。浅傷あさでか」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)