比喩たとへ)” の例文
あやまちて野中の古井ふるゐに落ちたる人の、沈みも果てず、あがりも得為えせず、命の綱とあやふくも取縋とりすがりたる草の根を、ねずみきたりてむにふと云へる比喩たとへ最能いとよく似たり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
額広く、鼻隆く、眉すこし迫つて、容貌おもばせもなか/\立派な上に、温和な、善良な、且つ才智のある性質を好く表して居る。法話の第一部は猿の比喩たとへで始まつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
或る日嬢様に向つて私も愈/\来春らいはるは博士論文を呈出しますと仕たり顔に云ふと、オヤ貴君あなたも御用学者になるの、博士と云ふと大層らしいが三年経つと三歳みつゝといふ比喩たとへもありますから子
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
比喩たとへを取らば、源流の暗き淵より水を引き
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ふく姿すがた高下かうげなくこゝろへだてなくかきにせめぐ同胞はらからはづかしきまでおもへばおもはるゝみづうをきみさまくはなんとせんイヤわれこそは大事だいじなれとたのみにしつたのまれつまつこずゑふぢ花房はなぶさかゝる主從しゆうじうなかまたとりや梨本なしもと何某なにがしといふ富家ふうかむすめ優子いうこばるゝ容貌きりやうよし色白いろじろほそおもてにしてまゆかすみ遠山とほやまがたはなといはゞと比喩たとへ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
聖経おきやうの中にある有名な文句、比喩たとへなぞが、普通の人の会話に交るのは珍しくも無い。娘の連はいづれも美しい珠数の袋を懐にして、蓮華寺へと先を争ふのであつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
比喩たとへをとらば、乾燥の薪を焚きて烈々の
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)