きこり)” の例文
日がよほど昇ってから、柴を背負って麓へ降りる、ほかのきこりが通りかかって、「お前も大夫のところの奴か、柴は日に何荷苅るのか」
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
むかしひとは、今日こんにち田舍ゐなかきこり農夫のうふやまときに、かまをのこしけてゐるように、きっとなに刃物はものつてゐたものとおもひます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
どうも仕方がないから此の通り秋はきこりをして、冬になれば猟人かりゅうどをして漸々よう/\に暮している、実に尾羽打枯らした此の姿で、此所こゝで逢おうとは思わなんだのう
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
このやうな、いはば革命を暗示するやうな悲痛な動揺が、已に収穫とりいれの終つた藁屋根の下でも、きこり小屋の前でも、山峡やまかひの路上でも電波のやうに移つていつた。
村のひと騒ぎ (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
毎年五月から九月まで、下生えの除去と、病虫害と、盗伐の有無をしらべるのが、木戸の役目の重要な一つであり、伐採にはべつにきこりが雇われるのであった。
ちくしょう谷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
雪ふかき所は雪中には山に入りてきこりする事あたはざるゆゑの所為しわざにて、我国雪のため苦心くしんするの一ツ也。
何人なんぴとか 敢てきこりうまかいせん。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(村々持分ンの定あり)二月にいたり雪の降止ふりやみたる頃、農夫のうふら此山にきこりせんとてかたらひあはせ、連日れんじつ食物しよくもつ用意よういしかの山に入り、所を見立てかりに小屋を作り、こゝを寐所ねどころとなし
絹と木材の集散地で、河見家でも広い木山を持っているため、庄屋のほかに藩の山方の差配さはいを命ぜられてい、屋敷のまわりにはきこりたちの長屋があった。——国吉はその長屋で生れた。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ときおり百姓とか猟人とかきこりなどにやつして、まわりをうろうろする者があるが、それは滝沢一派の監視者たちで、そのなかには成信の命をちぢめる役を受持った人間もいるのである。
泥棒と若殿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
我が隣駅りんえきせきにちかき飯士山いひじざんつゞく東に、阿弥陀峯あみだぼうとてきこりする山あり。