“横肥（よこぶと）” の例文
前には濃い紫と云ったけれども——肩に手を掛けたのは、近頃流行（はや）る半コオトを幅広に着た、横肥（よこぶと）りのした五十恰好（かっこう）。
革鞄の怪 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
赤黒くて強健で、無口で頑固な宇太松は、眇目（すがめ）で横肥（よこぶと）りがして、この上もない醜男（ぶおとこ）でした。
奇談クラブ〔戦後版〕：15 お竹大日如来 (新字新仮名) ／ 野村胡堂(著)
と、甘谷（あまや）という横肥（よこぶと）り、でぶでぶと脊の低い、ばらりと髪を長くした、太鼓腹に角帯を巻いて、前掛（まえかけ）の真田（さなだ）をちょきんと結んだ、これも医学の落第生。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) ／ 泉鏡花(著)
無地（むぢ）の行衣（ぎやうえ）見（み）たやうなものに、鼠（ねずみ）の腰衣（こしごろも）で、ずんぐり横肥（よこぶと）りに、ぶよ／＼と皮（かは）がたるんで、水氣（すゐき）のありさうな、蒼（あを）い顏（かほ）のむくんだ坊主（ばうず）が、……あの、居（ゐ）たんですつて——そして
浅茅生 (旧字旧仮名) ／ 泉鏡花(著)
處（ところ）が旦那樣（だんなさま）、別嬪（べつぴん）さんが、然（さ）うやつて、手足（てあし）も白々（しろ／″＼）と座敷（ざしき）の中（なか）に涼（すゞ）んで居（ゐ）なさいます、其（そ）の周圍（まはり）を、ぐる／＼と……床（とこ）の間（ま）から次（つぎ）の室（ま）の簀戸（よしど）の方（はう）、裏（うら）から表二階（おもてにかい）の方（はう）と、横肥（よこぶと）りにふとつた
浅茅生 (旧字旧仮名) ／ 泉鏡花(著)
資治卿の噂（うわさ）をして、……その千人の女に契（ちぎ）ると言ふ好色をしたゝかに詈（ののし）ると、……二人三人の妾（めかけ）妾（てかけ）、……故（わざ）とか知らぬ、横肥（よこぶと）りに肥つた乳母（うば）まで、此れを聞いて爪（つま）はじき、身ぶるひをする中（うち）に
妖魔の辻占 (新字旧仮名) ／ 泉鏡花(著)