横截よこぎ)” の例文
東の仙人峠せんにんとうげから、遠野とおのを通り土沢つちざわぎ、北上山地を横截よこぎって来るつめたい猿ヶ石さるがいし川の、北上川への落合おちあいから、少し下流かりゅうの西岸でした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ると、うしたことかさ、いまいふそのひのきぢやが、其処そこらになんにもないみち横截よこぎつて見果みはてのつかぬ田圃たんぼ中空なかそらにじのやうに突出つきでる、見事みごとな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
庭を横截よこぎって二人で上がって行くと、書棚しょだな椅子いすや額や、雑書雑誌などの雑然と積み重ねられたなかで、子供の庸太郎が、喫茶台の上と下に積んであるレコオドのなかから
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
多時しばらく静なりしのちはるかに拍子木の音は聞えぬ。その響の消ゆる頃たちまち一点の燈火ともしびは見えめしが、揺々ゆらゆらと町の尽頭はづれ横截よこぎりてせぬ。再び寒き風はさびしき星月夜をほしいままに吹くのみなりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
北上きたかみ川の西岸でした。東の仙人せんにん峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截よこぎって来る冷たいさるいし川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。
イギリス海岸 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
同時に少年も振返って、それと見ると、芝生を横截よこぎって、つかつかと間近に寄って
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東より西の此方こなたに、二ならび両側の家軒暗く、小さき月に霜てて、冷たきしろがね敷き詰めたらむ、踏心地堅く、細く長きこの小路の中を横截よこぎりて、ひさしより軒にわたりたる、わが青楓あおかえで眼前めさきにあり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)