楊柳ようりゅう)” の例文
左に太い幹をもつは楊柳ようりゅう。下には流るる河、上には浮かぶ雲。水に建ついおりの中には囲碁を挿む二人の翁。右には侍童じどうが茶をせんじる。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
彼の肩や頭へ何か時々、楊柳ようりゅうの上からポトと落ちてくるものがあった。手でで廻したのは不覚である。さぎやらからすやら、とにかく鳥のふんにはちがいない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、舟はすぐ楊柳ようりゅうの浅緑の葉のけむって見える水際のすなにじゃりじゃりと音をさした。許宣は水際へ走りおりた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
黄浦ホアンプー河の岸に楊柳ようりゅうの花が咲いて散って空に飜えり、旗亭や茶館や画舫などへ、鵞毛のように降りかかる季節、四五月の季節が来ようものなら、わけても日本がなつかしくなるよ。
鴉片を喫む美少年 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これは早く父允成の愛していた木で、抽斎は居を移すにも、遺愛の御柳だけは常におるしつに近い地にえ替えさせた。おる所を観柳書屋かんりゅうしょおくと名づけた柳字も、楊柳ようりゅうではない、檉柳である。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
熱あるものは、楊柳ようりゅうの露のしたたりを吸うであろう。恋するものは、優柔しなやか御手みてすがりもしよう。御胸おんむねにもいだかれよう。はた迷える人は、緑のいらかあけ玉垣たまがき、金銀の柱、朱欄干しゅらんかん瑪瑙めのうきざはし花唐戸はなからど
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その岸に立つ楊柳ようりゅうの葉のごとく、おののかせたことであろう。
大川の水 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
憔悴一般楊柳在 憔悴しょうすい一般いっぱんの 楊柳ようりゅうりて
向嶋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
次々と着いてくる早馬は、武衛門ぶえいもん楊柳ようりゅうに、何頭となくつながれて、心ありげに、いななきぬいていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京口瓜州一水けいこうかしゅういっすいの間、前岸ぜんがん瓜州の楊柳ようりゅうは青々として見えた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ほどなく、きれいな楊柳ようりゅう並木の繁華街の一軒に、古舗しにせめいた大店おおだなの間口が見える。朱聯金碧しゅれんこんぺきの看板やら雇人やといにんだの客の出入りなど、問わでも知れる生薬問屋きぐすりどんやの店だった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五体に颶風ぐふうを起して、無念と、やにわに組みついてゆくが早いか、重左はヒラリと楊柳ようりゅう流しにたいを開き、同時に振りかぶった稀代の竹杖に怖るべき殺気をブーンとはらませた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして彼らについて出て見ると、園の蓄水池ちくすいちほとり、涼しげな楊柳ようりゅうの木蔭に、むしろをのべ、酒壺さかつぼを備え、かごには肉の料理やら果物くだものを盛って、例の与太もン二、三十が恐れかしこんで待っている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すると、誰か、楊柳ようりゅうのうしろから
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)